昨今、日本では人材不足に悩まされている企業が増え続けています。IT化やDXなどの技術的な革新がありながら、2013年〜2019年にかけて6年連続で人手不足による倒産は増え続けています。
人材不足の企業が派遣を活用する理由
ここで、「なぜ採用にもっと力を入れないのか?」という疑問が生まれるでしょう。その答えは簡単です。
資金・人的工数・ノウハウなどの様々な問題があるからです。
特に中小企業は大手企業のように大規模な採用施策や、多額の広告費を使った求人メディアの掲載などは、資金の問題もあって現実的ではありません。
この問題の現在の最善策は「派遣会社を利用すること」です。
すでに利用している企業や、これから使っていこうかと考えている企業も多いのではないでしょうか?
ここからは派遣社員を受け入れる際の注意点や企業コンプライアンスの解説をしていきます。
派遣会社から受け入れする際の3つの注意点
まずは派遣社員を受け入れる際にしてはいけないことは下記の3点です。
- 事前面接はできない
- 派遣先が交通費を払うのはNG
- 派遣先責任者の選任
派遣業の知識がないと、知らない間にトラブルに巻き込まれることもあるので、確認しながら進めていきましょう。
事前面接はできない
まず最初に伝えたいのが、派遣社員を事前に面接して採用するかの判断はできないということです。
派遣社員の面接は「労働者派遣法」で禁じられています。
具体的には、派遣社員の中から派遣元が特定の人を選ぶというのができません。
なぜかというと、もし派遣元が自由に派遣社員を選ぶことができるのなら、選ばれる人が極端に偏ってしまい、個人の就業機会が不正に狭まってしまう危険性があるからです。
- 就業前の面接
- 応募書類の提出要請
- 年齢
- 性別
- 適性検査
これらで判断することは労働者派遣法第26条にて禁じられています。
派遣先が交通費を払うのはNG
次に交通費の清算方法です。
派遣先が派遣社員に直接交通費を渡すことは、賃金の直接払いの原則から労働基準法違反に違反することになります。
交通費は派遣元が払うのが原則ですが、一般的には派遣社員の時給に含まれていることが多いです。
※例外として、派遣社員の出張のための出張旅費等の費用は、原則として派遣先が負担しなければなりません。
派遣先責任者の選任
派遣先は派遣社員100人ごとに1人の派遣先責任者を選任し、配置しなければいけません。
派遣先責任者というのは、派遣社員が派遣先で円滑に業務を行えるように安全管理や勤怠管理、派遣元との連絡などを行う役職者です。派遣元責任者は兼任が認められておらず、1事業所につき1人の専属で従事しなければいけません。
派遣先責任者の資格は以下の3つです
(1)労働関係法令に関する知識を有する者であること
(2)人事・労務管理などについて専門的な知識、または相当期間の経験を有する者であること
(3)派遣労働者の就業に係る事項に関する一定の決定、変更をおこない得る権限を有する者であること
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派遣社員を受け入れ時の実際の流れと注意点
では、ここから実際に派遣社員を受け入れ時の実際の手順について紹介していきます。
- 派遣会社に依頼する
- 派遣予定の人との顔合わせ
- 受け入れ準備
派遣会社を探す際に注意する点は以下の4点です。
- その業者が出している求人数と内容
- 担当者の対応
- 口コミ・評判
- 優良派遣事業者認定
上記の4点を確認しながら慎重に進めていきましょう。
派遣依頼が終わったら次に実際に働いてくれる派遣社員と顔合わせを行います。
- 自己紹介などの挨拶
- 勤務時間と業務の確認
- 契約開始までの日程確認
大体このような話の内容になります。
上記でも説明しましたが、あくまで働くことが決まっている人と事前に挨拶や業務の確認をするだけなの
派遣予定の人との顔合わせが終わりましたら、最後に受け入れ準備を行いましょう。
具体的には、
- 座席
- 携帯電話(電話番号)
- 社内システムのアカウント(ID、パスワード)
- 社員証
- ペンや付箋などの備品
などが一般的です。
入社してからできるだけ早く業務に移れるように業務マニュアルやプロジェクト計画書も用意しておきましょう。
1点注意してほしいのが、派遣法や契約内容によってはできない業務がありますので、事前に確認しながら進めていきましょう。
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優秀な派遣を受け入れる方法
派遣社員でも優秀な人材とそうでない人材がいます。
その中でも優秀な派遣社員を受け入れる方法を3つ紹介します。
- 派遣会社を比較する
- 条件を変更する
- 早めに派遣に依頼する
派遣会社を比較する
1つ目は派遣会社を比較することです。
派遣社員を受け入れる際に、一社の派遣会社をだけに見積もりを依頼することは危険です。
まずが複数社に相談・見積もりを出し、自社が最も求めている人材が所属し、コストパフォーマンスが良い会社を選びましょう。
その際に比較を行うことで、より優秀な人材を獲得することができます。
条件を変更する
2つ目は条件を変更することです。
派遣会社に依頼を行う際に、人材に対する条件は非常に重要です。
自社に合う人材を獲得したいのはもちろんですが、条件を絞りすぎるのも良い判断とは言えません。
条件が厳しすぎて、想定していた予算を超えてしまうケースもあります。
そのため派遣会社に依頼をする際は、人材の条件面は予算と相談しながら決定しましょう。
早めに派遣会社に依頼する
3つ目は早めに派遣会社に依頼をすることです。
4月、7月、1月は人材の入れ替わりが激しく、派遣会社への依頼も多い時期です。
そのため、早めに依頼を行わないと優秀な人材を他社に持っていかれてしまいます。
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派遣を受け入れる際は企業コンプライアンスに注意
ここまで、派遣社員をどうやって利用するかの具体的な流れや注意点を紹介してきました。
ここからは派遣先の企業が必ず守らなければならない企業コンプライアンスについて紹介していきます。これは企業のブランディングにも影響する重要なことです。
- 3年ルールを理解する
- 正社員と待遇を変えない
- 派遣先が禁止事項を行い法令違反をした場合
3年ルールを理解する
3年ルールとは、派遣法に基づいて制定されている「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」です。これは同じ派遣社員を同じ部署や事業所で3年以上勤務させてはいけないというルールです。
なぜこのようなルールがあるかというと派遣社員の待遇を良くするためです。
簡単に言うと「3年も同じ事業所や部署で働いてくれたので、企業は正社員で雇用するなどの待遇改善の努力をしましょう!」ということです。
正社員として雇用する場合は、早めに派遣元企業に連絡するようにしましょう。
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正社員と待遇を変えない
自社の社員と派遣者の待遇を変えてしまうことは、良い判断とはいえないでしょう。
派遣社員はいわば他社の社員なので、自社で福利厚生や優遇をしなければいけないということはありませんが、明確に分けてしまうと企業のイメージが悪くなる可能性があります。
例えば、
- 自社の社員には食堂を使わせるが、派遣社員には使わせない
- ウォーターサーバーなどの共有の設備を派遣社員が使うことを禁止する
などの明らかな区別はやめましょう。
また、2015年には「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」が改正され、 派遣社員に対する福利厚生施設の利用に関わる配慮義務が制定されました。
必ず待遇を同じにしなければいけないという法的拘束力はありませんが、働いてくれている人たちが気持ち良く過ごせる環境を作ることは、後々会社の成長にも繋がります。
※あくまで「強制」ではなく、「配慮」ということなので、違反しても罰則はありませんが、待遇の差が目にあまる場合は行政指導が行われることもあります。
派遣先が禁止事項を行い法令違反をした場合
もし派遣先が契約違反や派遣法に反する禁止行為を行った場合は行政により『指導・助言』『改善命令・事業停止命令』『勧告・公表』などが行われます。
- 違反した内容を厚生労働省のホームページに企業名と共に掲載
- 労働局から刑事告発
- 懲役や罰金
などの罰則を受ける可能性がありますので、大変注意してください。
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まとめ:派遣の受け入れの際は注意点を理解する
ここまで派遣の受け入れ方法や注意点を解説しました。
結論、派遣社員はコストや人的工数を削減にも繋がり、人手不足の解消や売上の向上などの恩恵があります。しかし、受け入れ方法が間違っていたり、法令を遵守しなければ行政から大きな罰則を受けるということです。
ですが、余程のことがなければ罰則を受けることなどありませんので安心してください。派遣をお考えの方はまずは自身で調べてみて比較検討してみて下さい。