正社員になる前の“お試し期間”として用いられる試用期間。
しかし、試用期間内の給与や福利厚生はどうするのか?そもそも期限や退職時の手続きは何をすればいいのか?など、疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。
本記事では。試用期間中の給与の扱い方、決め方、解雇する場合の規定やルールなどを説明していきます。
試用期間とは?どんな制度?
試用期間とは、文字通り、“お試しの期間”といえるでしょう。本採用をする前に、採用した社員の能力や適性を評価し、最終的に会社側が判断するための期間といえます。
基本的に、本採用が前提ではあるものの、段階としては本採用の留保という状態です。そのため、本採用の判断にならない場合は解雇になります。
上記のことから、試用期間は法律的には、解約権留保付労働契約と解釈されています。
また試用期間の日数については法律に規定がなく、会社の就業規則によって決めることが可能です。そのため、数週間、1ヶ月、2ヶ月と自由に設定することができます。一般的には、3か月程度を試用期間とするケースが多いです。
試用期間中の給与はどうなる?
本採用時より低い場合が多い
試用期間中の給与は、本採用時より低い場合があります。
そもそも試用期間を設ける場合、企業側は期間や賃金などの条件について、就業規則や労働条件通知書に明記し、労働者に合意してもらう必要があります(労働契約法15条)。
このため、労働者が同意していれば、試用期間中の給与が本採用時より低くても、違法ではないのです。
残業代は支給される
試用期間中でも残業代に支払いは必ず行います。試用期間といえど、企業と労働者の間には雇用契約が結ばれていることに変わりはないからです。また、休日の出勤や深夜残業が発生した場合、割増の対応や代休の対応は必須になります。
中には試用期間中の残業を原則禁止している会社もあるかもしれません。
しかし、禁止=残業代を払わなくてもよいということではありません。業務上の理由で残業が発生した場合は残業代を支払う義務があるため、試用期間だからと言ってこれらの対応を疎かにしないようにしましょう。
賞与や福利厚生など、一部受けられない可能性がある
賃金以外に会社が独自に支給している各種手当(家族手当や住宅手当など)は、試用期間中は対象外にしているケースもあります。また賞与に関しても会社によって異なり、仮に試用期間に賞与が払われても、満額の支払いではない場合もあります。
賞与や福利厚生、手当については必須事項ではないため、労働条件通知書や就業規則を確認するようにしましょう。
求職者の方の場合は、試用期間中に受けられない手当の内容も事前に確認しておくことがおすすめです。
簡単に解雇されない
法律上、試用期間は「会社側が、採用した社員を解雇する権利を留保している期間」とされていますが、会社側と社員側には正式な労働契約が結ばれています。
そのため、試用期間中や試用期間終了後に「うちの会社には向いていない」「能力が足りない」などの漠然とした理由で、 会社側が社員を一方的に解雇することはできません。 試用期間は「企業側が一方的に解雇できる期間」や「すぐに解雇される可能性がある期間」と思われがちですが、それは間違った知識です。
試用期間の給与の決め方
試用期間中の給与が本採用時より低くても問題ありませんが、会社と従業員の間で合意が必要です。試用期間中の賃金額については、企業に合意内容を記載した書面を交付する義務があります。
また、試用期間中の給料は不当に低くしてはいけません。
まず最低賃金を下回ってはいけません。最低賃金は毎年地域別に改定されるので、試用期間中の給与の設定は年ごとに必ず確認するようにしましょう。
また前述のとおり、試用期間中でも残業代、深夜残業代、休日出勤代などの手当は必ず支給しなければいけません。
試用期間を設ける企業側のメリット・デメリット
ここからは試用期間を設ける企業側のメリットとデメリットを解説します。
試用期間を設ける企業側のメリット:採用リスクの削減
試用期間を設ける企業側のメリットは、採用後のリスクを減らすことができることです。
企業は試用期間開始の14日以内であれば即時解雇しても良いという解約権を保持しており、その期間で本当に自社に合う人材なのかを見極めることができます。
採用後にその人材が本当に自社にマッチしているのかを確かめる意味でも企業側からすれば大きなメリットになります。
試用期間を設ける企業側のデメリット:内定辞退の危険性
試用期間を設ける企業側のデメリットは、求職者が内定辞退をしやすくなることです。
試用期間中は従業員にとって不安定な状況になります。
そのため内定を出したとしても、他の会社が試用期間なしで内定を出す場合に自社の内定を辞退される可能性が高くなります。
それが企業側の大きなデメリットです。
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- 試用期間を設けるメリットは?
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採用後のリスクを未然に防ぐことが出来ます。また試用期間開始の14日以内であれば、解約手当等が発生しません。
試用期間に関してよくある質問
採用する側も、試用期間は何かと疑問点がわくものです。ここでは、人事担当者から寄せられた試用期間に関する質問をまとめました。
- 試用期間中に退職した場合はどうする?
- 試用期間中に税金はかかる?
- 試用期間中の社会保険はどうする?
- 試用期間に解雇することはできる?
試用期間中に退職した場合はどうする?
試用期間における労働契約では、一般的に「解約権留保付労働契約」という条件で締結されます。これは会社と労働者の両方が、解約する権利を持っています。ただし即日では解約できませんので注意しましょう。
なお、試用期間中だったからといってお給料を支払わない企業があるようですが、これは違法となるので絶対にやめましょう。実稼働日については、その日数分の給与をきちんと支払いましょう。
試用期間中に税金はかかる?
試用期間中は、本採用後と同様に「所得税」「住民税」が発生します。ただ住民税については、納税義務者が自ら申告して納税する府中徴収の方式が一般的です。給与から差し引く特別徴収の場合、会社が自治体に手続きを行う必要があります。
普通徴収か特別徴収かで対応が異なるため、その旨をきちんと伝えましょう。なお、各種税金はいずれも給与から源泉徴収しましょう。
試用期間中の社会保険はどうする?
被保険者の要件を満たしていれば、試用期間開始と共に加入する必要があります。
一般的に正社員の場合、健康保険・介護保険・厚生年金保険・雇用保険の資格要件を満たしています。当該社員が被保険者になることで、保険料の納税義務が発生するため、毎月の給与から源泉徴収しましょう。
試用期間に解雇することはできる?
労働契約法第16条によると、客観的かつ合理的な相当性が認められれば、試用期間中に解雇することは無効であると定められています。つまり、試用期間中に労働者を解雇する場合には、高度な理由が求められます。ただし、試用期間の契約締結から14日間以内であれば、労働者への予告なしに即時解雇できて、それに伴う手当も発生しません。
- 試用期間中の税金や社会保険はどうなる?
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一般社員と同様、試用期間中の方でも税金や社会保険料の納付義務は発生します。
試用期間中の解雇が認められるケース
「継続的な雇用が適当でない」と判断され、試用期間中の解雇が認められるケースは以下のものが例として考えられます。
①正当な理由がなく遅刻や欠席を繰り返し、改善がみられない
②履歴書や職務経歴書の内容に虚偽があり、社内の秩序を乱している
③勤務態度が常軌を逸するほど悪く、業務担当が困難
④病気や怪我によって一時的に休職した後も継続的な就業が難しい
いずれの場合においても第三者が見て正当だと認められる必要があり、具体的な事実を証明する証拠が必要です。
具体的な事実や証拠がないにも関わらず、試用期間だからといって解雇に結びつけることは認められていません。
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まとめ:試用期間の意味を理解して給与を決めよう!
試用期間中の給与の扱いや、解雇するケースなどの具体例を解説していきました。
本記事で紹介したように、特に試用期間中の給与の扱いは非常に重要になり、場合によっては罰則になるケースもあります。
基本的に、社員になることが前提である場合が多いので、試用期間だからと言って対応や待遇を著しく変えることは、なるべく避けるようにしましょう。