人材派遣会社の抱える悩みやそれを解決する方法について知りたいと思っていませんか?
人材派遣会社は、条件さえ満たせば低いリスクで開業することができるのが魅力です。しかし、運営面ではさまざまな悩みに直面します。最新の業界事情を元に、人材派遣業界全体に共通する課題や中小の人材派遣会社が抱えやすい悩みとその解決のヒントを説明します。
- 人材派遣会社の悩み・課題は大きく3つ
- 中小企業特有の大きな悩みは求職者獲得
- 人材派遣会社の悩みは新規開拓の効率化・仕組み化で解決できる
人材派遣会社の悩み・課題は大きく3つ
人材派遣会社が抱える悩みには、人材ビジネス特有の課題や人材派遣というサービスに由来する課題などがあります。大きく3つに分けて、説明します。
- 新規開拓の難しさ
- 既存契約維持にはフォローが必須
- 市場動向・社会経済の変化への対応
人材派遣会社の悩み 新規開拓の難しさ
人材派遣会社の悩みには、まず、事業を継続する上で重要となる「新規開拓」が一筋縄ではいかないという点があります。
人材派遣業は、利益率が低い薄利多売の構造です。日本人材派遣協会によると、派遣会社の平均的な営業利益は1.2%ほどだと言われています。そのため、事業継続のためには毎月確実に売り上げを立てていく必要があります。
人材派遣の売り上げは「派遣先」と「求職者」をバランスよく集客し、かつマッチングを行ない、派遣契約を成立させて初めて成り立ちます。派遣先向け営業と求職者向け営業を並行して実施する必要があり、どちらにもコストやマンパワーがかかります。
また、下記のような課題もあります。
新規参入が容易なため競合他社が多い
人材派遣業は特別な設備や仕入れが必要なく、許可取得のための資格も簡単に取得できます。先行投資がほとんどかからないことから、新規参入が容易と言われています。
派遣会社の支店や営業所を含めた許可事業所数の合計は2015年に全国で77,956所まで増加しました。その後、派遣法改正を背景とした業界再編・事業統合の動きによりその数は6割ほどまで落ち込みますが、2020年から再び増加傾向にあります(日本人材派遣協会 調べ)。
人材獲得競争は大手に有利
中小の派遣会社にとって一番の悩みとなるのが「求職者集客」です。公共スペースへ向けてブランド戦略を行なっているパーソルグループや、電車広告でよく見かけるマイナビグループ、求人検索エンジン「Indeed」を買収したリクルートなど、潤沢な資金力を背景にした求職者への訴求では大手に勝つことはできません。
さらに、派遣労働者の雇用安定・キャリアアップを目的とした2015年の派遣法改正では、「期間制限ルール」・「雇用安定化措置」が設けられました。これらの措置の結果として、経営体力のある大手企業の方が、質の良い人材を長期間抱えることができる傾向にあります。
中小企業は上記のような集客面でのハードルを、独自のアプローチで攻略する必要があります。
人材派遣会社の悩み②既存契約維持にはフォローが必須
人材派遣の営業は、新規開拓で獲得した派遣契約について「派遣先」・「派遣社員」の両方をフォローする必要があります。
厚生労働省のデータでは、一回の派遣契約の期間が3ヶ月以下の割合は58.5%。新規に派遣契約を獲得しても、その6割は2ヶ月後には契約更新有無を見据えて派遣社員と派遣先双方との交渉に入らなくてはなりません。
また、契約更新以外の場面でも定期的に状況確認を続け、派遣先では新たな人員ニーズがないかを確認し、派遣社員には就労上の悩みがないかどうか確認し、それぞれと信頼関係を築いていく必要があります。
定着率に悩みを抱えることもある
新規に人材を派遣した場合、派遣先にスムーズに定着するかどうかも大きなポイントです。
この「定着率」が悪く、せっかく派遣した人材が早期に退職を繰り返してしまうと、派遣先は深刻な人材不足に陥ります。結果として派遣先からの信頼を失い、追加の契約をもらうどころか、既存契約を失うことにもなりかねません。
定着率が悪い場合は、派遣契約成立までのプロセスで原因分析を行い、対策を打つことで改善する場合があります。定着率改善の取り組みにおいても「派遣先」「派遣社員」双方とよくコミュニケーションを取る必要があります。
派遣定着率の改善の方法はこちらの記事で紹介しています。
人材派遣会社の悩み③市場動向・変化への対応
人材派遣業界で安定した経営を行うには、この先伸びる業界や需要の高まる派遣人材へのアンテナを常に高くして、市場の変化に機敏に対応する姿勢が必要です。
人材派遣業が影響を受ける変化には、下記のようなものがあります。
景気変動による人材需要の変化
派遣業界は、景気による影響を特に強く受けると言われています。しかし、景気が良ければ派遣先は増えますが、逆に求職者の獲得が難しくなるなど、単純に景気と連動して売り上げが増減するわけでもありません。得意とする業種・業界を複数持っておくなど、リスクの分散の考え方も必要です。
国の政策や法改正・働き方の変化
2015年の派遣法の改正のように、雇用の安定化・失業率の改善を目的とした国の政策によって派遣サービス自体が影響を受けることがあります。同じ派遣社員を同じ派遣先の同じ部署に派遣できる期間の上限をもうけた「期間制限ルール」は、登録派遣社員の働き方を大きく変えました。
派遣事業へのニーズの変化
DX化の推進、AIの導入によって、人材派遣のニーズはオフィスワーク系から、DXやAIを使いこなす側のエンジニア系に置き換わることが想定されます。また、少子高齢化による労働人口の減少で人手不足になった企業には、外国人人材の派遣、シニア人材の派遣などが求められるでしょう。
求職者のニーズの変化
社会の変化とともに、派遣社員として就業する求職者の側のニーズにも変化は生じます。福利厚生や正社員との均等待遇、派遣会社のフォローアップ体制はこれまでと変わらず求職者が重視する部分です。
それに加え、テレワークなどのより多様な働き方への対応、スキルアップへのサポート、教育制度の充実などの新たなニーズを満たしていく必要があるでしょう。
社会ニーズの変化
人材のスキル、専門性に関する派遣先のニーズは年々高度化しています。派遣先が自社では育成・採用できない人材を派遣社員で補填するという需要は今後も高まるとされていて、派遣元が新卒採用を行い、人材育成に乗り出す専門職派遣の会社も増えています。
また、AI技術の進展に伴うホワイトカラー大量失職が現実となった場合は、派遣会社が受け皿となってキャリア開発・教育訓練を実施し、人材の社会還元を行うというシナリオも予想されています。
人材派遣会社の悩み・課題を解決するには
人材派遣会社の悩み・抱える課題を解決するには、既存業務の効率化により時間と資金を確保し、変化に備えるのが正攻法でしょう。
- 新規開拓を効率化・精度を高めて仕組み化する
- ①およびデータ分析により既存契約フォローにかける時間を短縮する
- ①と②により、変化に対応する企業体力をつけ、時代が求める事業展開を行う
それぞれについて説明します。
①新規開拓を効率化・精度を高めて仕組み化する
新規開拓が月々の売り上げに直結する人材派遣業では、営業手法の仕組み化は、事業継続の要になります。
今後の人材派遣業では、効率良く高い精度で成果を出せるWebマーケティング手法が必須とされています。集客の主流はWebを活用し、ターゲットを絞ったアプローチで、最初から確度の高い営業活動を行うことです。
派遣先集客では、これまでのアウトバウンド営業(テレアポや飛び込み営業)に加え、インバウンド営業(オウンドメディア運営やホワイトペーパーなどによる顧客から問い合わせを起こさせる仕組みづくり)への注目も高まっています。
求職者集客では、求人掲載サイトへの依存を脱し、広告コストを積み上げできる自社メディア(オウンドメディアや採用サイト)へ集客の軸をシフトする動きもあります。求職者集客のWebメディアを使った集客方法については、こちらの記事で解説しています。
自社のソリューションや自社の差別化ポイントに興味を持った企業・人とのマッチングを仕組み化できれば、営業の効率化にもつながるでしょう。
②既存契約フォローにかける時間を短縮する
①新規開拓の効率化・精度を高めて仕組み化が成功すれば、あらかじめ自社が得意とする分野にニーズを持つ顧客とのマッチングができるので、フォローにかかる時間も自ずと短縮されることが予想されます。
もう一つのポイントは、不具合やトラブルの解決方法です。新規開拓の費用対効果やWebマーケティングの結果の検証、派遣定着率や離職率の分析など、課題がある場合は事実の調査とデータ分析に基づく改善活動を行いましょう。限られた時間を有効に使うことができます。
既存契約フォローのもう一つの面に、派遣先や派遣社員との信頼関係構築があります。こちらにはぜひ適切に時間をとって、コミュニケーションを図っていきましょう。
③変化に対応する企業体力をつけ、時代が求める事業展開を行う
変化に対応するには、企業体力が必要です。成長分野で会社の軸となる顧客を掴んだら、これから需要の高まるニーズを読み、市場の変化に応えるための戦略を立てましょう。
人材派遣業は、これまで時代の要請に応えながら成長してきました。変化する市場に合わせ、人材派遣会社も集客の方法やサービス内容そのものも変えながら事業を続けています。
既存分野、得意分野での事業安定も重要ですが、今後の成長が見込める市場の顧客を開拓できるかどうかが、事業展開の鍵になります。
人材派遣会社の悩みは新規開拓の仕組みづくりから
本記事では、人材派遣会社の悩み・課題とその解決方法について説明しました。解決の第一歩は「新規開拓」の効率化・仕組み化です。「新規開拓」では多くの事業者が存在する中、厳しい競争に勝ち抜く必要があり、効率良く高い精度で成果を出せるWebマーケティング手法が注目されています。
現在、労働市場では人不足の状況が続いており、求職者へどうやってリーチするかは派遣会社各社にとって大きな課題です。求職者集客で効率的に成果を出せれば、新規開拓の多くの問題が解決します。Webマーケティングの導入で、大手と違う戦い方を選ぶのがおすすめです。