ペーパーレスとは政府も推奨している、文書の保管を電子化することを指します。
2019年4月より施行されている「働き方改革」でもペーパーレス化は政策の一つに加えられています。
さまざまな書類を紙から電子化することによるメリットもあれば、デメリットもあるでしょう。
この記事では、ペーパレスとは何かを説明します。
ペーパーレス化の対応ができる書類とできない書類の違いや、ペーパレスの進め方について解説します。
これからツールを導入してペーパーレスを推奨していく方はぜひ参考にしてください。
ペーパーレス化とは
ペーパーレス化とは、紙で保管していた資料を電子化して保存や保管を推奨します。
ペーパーレス化を奨める目的は、オフィス内の文書書類や請求書などの電子化を進めて、業務効率の改善を図ることです。
日本政府もペーパーレス化を推進しており、2005年にはe-文書法を施行しました。
国税の関係帳簿・書類については、以前制定された電子帳簿保存法も要件緩和されて2022年1月より改正法が施行されました。
新型コロナウイルスの感染防止策としてテレワークを実施する企業も増えており、文書のデジタル化は進みつつあるものの、完全なペーパーレス化にはいたっていないのが現状です。
文書を電子化する設備不足や、社内ルールの整備が追い付いていないといった理由から、いまだに紙の資料や書類を処理するために出社するケースも生じています。
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ペーパーレス化のメリット
ペーパーレス化のメリットを解説します。
ペーパーレス化を進めるメリットは次の4点です。
- 業務効率向上
- コスト削減
- オフィスの有効活用
- セキュリティ効果
ひとつずつ解説します。
ペーパーレス化のメリット①業務効率向上
紙の資料はオフィス内の決められた場所に格納されている場合がほとんどです。
契約書や覚書、過去の請求書の内容を確認したいとき、所定の保管場所に取りに行かなくてはなりません。
また資料を利用した後は、戻しに行く時間も必要なため、席を立って移動する時間をロスしているといえるでしょう。
ペーパーレス化して電子化すると、パソコン上で資料にアクセスできるので、業務効率の向上につながります。
ペーパーレス化のメリット②コスト削減
紙の資料は印刷が必要なので、様々なコストがかかっています。紙代やプリンターのトナー代、維持やメンテナンス費用がそれに当たります。
紙の資料を電子化すると、紙代は大幅なコスト削減につながるでしょう。
プリンターの印刷代、トナー代、使用頻度が減少するためメンテナンス回数も削減できるかもしれません。
ペーパーレス化のメリット③オフィスの有効活用
紙の資料によっては、最大5年間ないし10年間保存しなくてはならないものがあります。
5年分や10年分の紙資料は、保管場所にも莫大なスペースが必要です。
資料を電子化するとデータはクラウド上で管理されるため、オフィスを広く有効活用できるのもメリットといえます。
ペーパーレス化のメリット④セキュリティ効果
紙の資料は持ち運びが便利な分、紛失や漏洩のリスクも生じます。
電子化された書類は閲覧権限を付与できるため、必要に応じてアクセス権限を振り分けられるため、セキュリティ効果が高まります。
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ペーパーレス化のデメリット
ペーパーレス化を推進するデメリットは次の3点です。
- 全体像が見えづらい
- 導入コストがかかる
- システム障害の影響を受ける
ひとつずつ解説します。
ペーパーレス化のデメリット①全体像が見えづらい
書類を電子化することで発生するデメリットとして、書類の全体像を見えづらくなる点が挙げられます。
書類は1つずつデータ化されており、全体像を俯瞰して見られないため、1ページずつ確認しなくてはなりません。
ペーパーレス化のデメリット②導入コストがかかる
書類の電子化は専用のソフトを導入し、書類をスキャンした際にデータ振り分けを設定しなくてはなりません。
電子化する書類の枚数が多ければ多いほど、費用コストは高くなります。
ペーパーレス化のデメリット③システム障害の影響を受ける
書類を電子化してペーパーレス化すると、書類データはクラウドサーバー上に格納されます。
インターネットに接続した状態で書類を閲覧する状態です。
契約したシステムの障害が発生したり、インターネット接続に障害が発生した際は、資料を一切閲覧できなくなります。
システム障害は予測不可能なので、突然発生した際に業務に支障が出るのがデメリットといえるでしょう。
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ペーパーレスの対象になるものと対象外のもの
ペーパーレス化を推進するといっても、すべての書類をペーパーレス化できるわけではありません。
ペーパーレスの対象になる書類と対象外のものがあります。
対象になるものと対象外のものをそれぞれ解説します。
対象になるもの
e-文書法は、企業などで扱う紙の書類や帳簿を電子ファイルでの保存を可能にしました。
ただe-文書法で電子化できる文書とできない文書が存在します。
まずe-文書法で電子化が可能とされる文書は次のものです。
仮にe-文書法で対象外となる文書を電子化し、社内で活用することは問題ありません。
ただし、正式な書類としては認められないため、あらためて紙として作成しなければなりません。
手間を防ぐためにも、主な電子化できる文書とできない文書を把握しておく必要があります。
- 財務や税金に関する文書
会計帳簿、資産負債状況書類、財産目録、事業報告書、領収書・見積書・注文書・請求書・納品書の写し
- 会社経営に関連する文書
定款、株主総会議事録、取締役会議事録、組合員名簿など
- 企業の決算に関連する書類
貸借対照表、損益計算書、剰余金処分案、損失処理案、附属明細書、監査報告書など
対象にならないもの
- 船舶に備える安全手引書
緊急時にすぐ解読可能にしておくべき書類
- 免許証、営業許可証、建築業許可証
現物性の高いもの
- 不動産取引における重要事項説明書
- マンション管理業務委託契約書面
- 定期借地契約
- 定期建物賃貸借契約書面
不動産関連書類の多くはe-文書法の対象外になっています。
紙の書類を電子化するための2つの法律の違い
紙の書類を電子化して保存できるように定めた法律は、e-文書法と電子帳簿保存法の2種類あります。
電子帳簿保存法は1988年に施行されました。2つの法律の違いはどのようなものでしょうか。
- 電子化の対象とする書類の違い
電子帳簿保存法の対象とする文書は国税関係書類や帳簿が主です。
- 税務署長の事前承認が必要
電子帳簿保存法において、文書を電子化するには事前に税務署長の承認が必要ででした。
ただし2022年1月1日以後に電子化される書類については、事前承認は撤廃されるように法改正されました。
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ペーパーレス化の進め方
e-文書法に対応して書類をペーパーレス化するには4つの条件をクリアが求められます。
それぞれ見ていきましょう。
- パソコンなどのデバイスで表示した際に明瞭に閲覧できる
- 書類の検索が容易にできる
- 管理体制が万全である
- 機密性が保持されている
ひとつずつ見ていきましょう。
ペーパーレス化の進め方①パソコンなどのデバイスで表示した際に明瞭に閲覧できる
ペーパーレス化した書類はパソコンやタブレット、スマートフォンといったデバイスで表示したときにしっかり読めることが大事です。
可読性にすぐれていないとe-文書法に対応しているとは認められず要件を満たせません。
必要に応じて書面として出力できる状態でなくてはいけません。
ペーパーレス化の進め方②書類の検索が容易にできる
紙面で文書を保存する場合、書類はファイリングされているので保管場所で探さなければなりません。
ペーパーレスで電子化された書類は、パソコンなどで検索すると簡単に見つけ出せます。
着席したままで書類を閲覧できるのは電子化のメリットですが、書類の保存方法を誤るとファイルがバラバラになってしまい非効率になります。
ファイルやフォルダは関連性のあるものをまとめて保管するなど、検索性を確保するのが大切なポイントです。
ペーパーレス化の進め方③管理体制が万全である
紙の書類を保管していると紛失のリスクを生じます。
ペーパーレス化されたら紛失はしないかというとそうではありません。
電子化した書類を保管するリスクは、データの消失や破損することです。
さらに書類を電子化することにより、さらに改ざんや消去といった新たなリスクにさらされます。
データの管理体制に万全を期す必要があります
ペーパーレス化の進め方④機密性が保持されている
書類を電子化したときに、一番大事といっても過言ではありません。
ペーパーレス化した文書は誰もが簡単に開けないように機密性を求められます。
電子化された文書はパスワードを設定するか、暗号化するなど機密性を保持する対応が必要となります。
ペーパーレス化のポイント
ペーパーレス化は進めていきたいと思っていても、現実的になかなか進まない企業が多いのではないでしょうか。
ペーパーレス化を推進していくためには、ペーパーレス化を経営課題として全社一丸となって取り組む姿勢が必要です。
またペーパーレス化は一気にしようとしてもうまくいきません。
ツールを導入しつつ段階的に行うのが成功の秘訣といえるでしょう。
- 経営課題に盛り込む
- ツールの導入など段階的に行う
- タブレット端末を活用する
ペーパーレス化のポイント①経営課題に盛り込む
ペーパーレス化は企業の一部だけで取り組んでも浸透しません。
経営課題に盛り込み、会社全体のミッションとして取り組む必要があります。
ペーパーレスにすると、どのようなメリットがあるのかを理解し、社内に浸透させることが重要です。ペーパーレス化により削減されるコストは次のとおりです。
- 紙の書類を探さなくてはならない時間や人件費のコスト
- 紙の書類を保管する場所に対するコスト
- 紛失や災害などによる消失と復旧のコスト
ペーパーレスを実施すればコスト削減が可能となり、ペーパーレス化にメリットがあると理解できるでしょう。
ペーパーレス化のポイント②ツールの導入などで段階的に実施する
最初からすべての書類をペーパーレス化しようと考えても、うまくいかないケースが多いでしょう。
一部の書類をツールの導入などでペーパーレス化を実現し、少しずつ広げていくのが効率よく効果もあがりやすいといえます。
ツールの導入でペーパレース化しやすいものとしては、顧客情報が挙げられます。
従来は紙台帳や名刺で管理されている場合が多いですが、顧客管理システム(CRM)の導入を推進し、電子化すると書類のペーパーレス化は前進します。
ほかには社内会議の資料をPDFで電子化したものを使用する取り組みも有効といえます。
1つずつ取り組むことで会社全体にペーパーレス化の意識を植え付けることで、ペーパーレスの推進が加速していくことでしょう。
ペーパーレス化のポイント③タブレット端末を活用する
最後はタブレット端末を活用することです。
タブレット端末にはないさまざまなメリットがあります。
例えば営業時に何枚もの紙の資料をもっていかずに済むことや、毎回資料を印刷しなくて済むことなどがあります。
使い勝手やコスト面などを考慮してもタブレット端末の活用は早い方が良いでしょう。
採用・求人でお困りの方はこちら!初期費用・ランニングコスト0円!求職者と面接が決まるまで課金はなし!
まとめ:ペーパーレス化はお早めに!
2018年6月に閣議決定された「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」では、デジタル化を推奨するために次の3点を挙げています。
- 行政サービスのデジタル化100%を目指す
- 行政が保有しているデータを100%のオープン化を目指す
- デジタル改革の基盤を整備する
デジタル化を推進していくうえでペーパレス化も進んでいくと考えられています。
ただ、株式会社エイトレッドが実施した「官公庁のペーパーレス・脱ハンコ」実態調査では、官公庁におけるペーパーレスや脱ハンコの進捗は48.1%に留まっているという結果になっています。
とはいえ官公庁職員の78%が官公庁においてもDX推進は必要と回答していることから、ペーパレス化を含めてデジタル推進が進んでいくでしょう。