FacebookやTwitterなどのSNSを使った採用手法であるソーシャルネットワークリクルーティングが、今ますます注目されてきています。
SNS採用について「そもそもどんなもの?本当のところはどうなの?やった方がいいの?」と思っている採用担当者の方は多いのではないでしょうか。
今回はそんなSNS採用について、トレンドの背景、期待できる効果・メリット、デメリットについてまとめます。また、実際に多くの企業が取り組んでいる「SNSを包含した採用戦略」についても具体的に解説。また、SNSを使用する上で最も注意したい「炎上リスク」についても、事例を交えてどうすれば防ぐ事ができるのか考えていきます。
SNS採用の導入を検討中の方はぜひ参考にしてくださいね。
こちらの記事では、採用活動の方法や応募者を増やすポイントを紹介しています。
SNS採用とは?
よく使用されるプラットフォームには、Instagram、Facebook、Twitter、Tiktok、Line、 Youtube、LinkedIn などがあります。
SNSなどのソーシャルメディアを使用したこの採用プロセスは、海外採用市場においては2000年代から発展してきました。
SNS採用が注目される理由
日本では、2010年代から主に新卒採用においてSNS採用の導入が進みました。
その後、SNSは若年層だけでなく全年代に普及。2020年の調査では10代から40代で、ソーシャルメディアの利用率がメール・電話よりも高いという結果が出ています。
SNS含むソーシャルメディアは今や無視できない情報インフラに成長しているのです。
出典:総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」
SNS採用の背景には採用市場の変化も
2000年代以降、少子高齢化が進む日本では労働力人口が年々減少しています。
2021年の総務省の調査によると労働力人口は2年連続の減少。特に15〜64歳の労働力人口は前年に比べ15万人の減となっています。
一方で雇用者数に大きな変化は見られないため、日本の採用市場は今後ますます競争が激しくなることは確実です。
従来型の採用は「採用が必要な時に求人情報を出し、求職者の応募を待つ」と言う、いわゆる「待ち」の手法でした。しかしSNSを使えば、企業側から候補者を見つけに行くことができます。優秀な候補者に他社よりも早く会うために、SNSを利用するのです。
参考:
総務省統計局 「令和3年労働力調査年報」
内閣府 「高齢化の状況」
SNS採用はこれからの主流に?
求職者の動向は確実に変化してきています。
2022年卒の新卒者が「就職活動中に活用したメディア」の調査では「ソーシャルメディア」・「動画配信サービス」活用率の伸びが、前年比11ポイントとメディア中最大となりました。
出典:リクルート就職みらい研究所「採用活動中間調査 就職活動状況調査 2022年卒」
SNSを駆使する世代は「マスメディアの報道」や「企業の公式情報」などだけでなく、より「リアルな情報」をソーシャルメディアから集めます。
現在の採用戦略にSNSを取り入れて情報発信することは、採用市場で優位に立つために必要と言えるでしょう。
SNS採用と従来の採用方法の違い
SNS採用の特徴的な効果は、潜在的候補者層を発掘できることです。
企業の発信コンテンツに魅力があれば、SNS内で広く共有・拡散される可能性があります。これまで接点のなかったユーザーへ情報が届くことで企業の認知度upが狙え、フォロワーとなってもらえれば、定期的に情報を配信することができます。フォロワーは、企業のファン、求人時の潜在的な候補者層とも言えます。
また、将来的に十分な潜在的候補者層が集まれば、企業がSNSを通じて候補者に直接求人をかけることも可能でしょう。SNSの強みは「双方向コミュニケーション」のプラットフォームでもあるところです。企業が人材とSNSを通じて直接コンタクトを取り、スカウトや選考参加依頼を行うこともできます。
労働人口が減少している日本の採用市場において、今後有効な新しい採用手段です。
SNS採用で期待できる3つの効果
SNSを活用した採用に期待できる効果を紹介します。
SNS採用の効果1:企業・採用ブランディングで認知度向上
従来の採用媒体と違い、SNSではスペースや更新頻度に課金や制約がありません。他の媒体で伝えきれなかった自社の魅力を、一般ユーザーに対して広く発信できます。使いこなせば、中小企業やニッチな業界のブランディングにも大きな効果が見込めます。
他に、会社の社風が伝わるイベントや社員の働く風景など、よりリアル・身近な情報を発信することで採用ブランディングにも力を発揮します。
SNS採用の効果2:潜在的候補者と繋がり母集団を広げる
SNSの最大の特徴は「拡散力」です。
発信したコンテンツが魅力的であれば「リツイート」や「シェア」などの機能でSNS上で拡散されます。これによって、もともと企業やサービスのことを知らなかった人にも情報が届く仕組みです。もし受信者がコンテンツに興味を持てば、企業のフォロワーとなってくれます。
採用時の母集団形成では、企業が出会えていない「潜在的候補者」が約70%もいると言われています。SNSは中長期的な運用を行うことで、フォロワーを増やし、この「潜在的候補者」の掘り起こしに効果があります。
SNS採用の効果3:ミスマッチ・アンマッチの防止効果
候補者のSNSアカウントを特定できれば、その発信内容から候補者の指向・興味などを推し量ることができます。面接だけでは見極めが難しい、人となりへの理解を深めることができるため、自社の社風とマッチするか検討することもできるでしょう。FacebookやLinked-Inなど、実名性の高いSNSを利用しての採用で効果的です。
また、企業カルチャー等のソフト面を発信することで、働くイメージを具体的に持ってもらい、採用後アンマッチを防ぐ効果も期待できます。
SNS採用のメリット・デメリット
- 若年層へのアプローチができる
- 潜在的候補者層へのダイレクトコンタクトができる
- 企業のブランディングツールになる
- ミスマッチ・アンマッチの防止
- 採用活動のコスト低減
- 運用工数がかかる
- 事前に十分な運用計画を立てる必要がある
- 短期的な採用に不向き
- 炎上リスクがある
SNS採用にはメリット・デメリットがあります。
魅力的なメリットの多いSNSを活用した採用ですが、不得意分野・デメリットもあります。
SNS採用は「求職者との距離の近さ」や「拡散力」「低コスト」が魅力で、多くのメリットがあります。
一方で、SNS採用は基本的に「中長期運用」によって、認知度upやフォロワー獲得を進め、母集団形成をしていきます。そのためには、一定頻度での更新や入念なコンテンツ設計も必要です。
デメリットを理解し、事前に対策を検討した上で、社内へ導入する必要があるでしょう。
SNS採用活動のメリット
まずはメリットから見ていきましょう。
SNS採用のメリット①若年層へのアプローチができる
若年層はSNSを日々の情報収集で利用しています。SNSでの情報配信はそんな若年層に自然にアプローチする方法の一つです。
新卒採用では、学生たちは常にSNSを使って就活情報を共有しています。2022年の新卒採用データでは「就職活動中にSNSを活用した」と回答した学生の割合が急上昇しました。
SNSでの情報発信は若年層にとって、目に触れる機会も多く、気軽に読んでもらえます。企業に興味を持ってもらうきっかけとして利用することができるでしょう。
SNS採用のメリット②潜在的候補者層へのダイレクトコンタクトができる
SNSの最大の特徴は、シェアやリツイートなどによる「情報の拡散力」です。
発信したコンテンツが話題になり「こんなの知ってる?」「これ見てみなよ」とシェアされることで、これまで接点のなかったユーザーにも知ってもらうことができます。
また、フォロワーになって貰えば、ダイレクトに定期的な情報発信ができます。今、就職・転職活動をしていない、もしくは考えていなかったユーザーも、その企業の求人が出た際には興味を持つ可能性があります。
SNSは中長期的な運用を行うことでフォロワーを増やし、この「潜在的候補者」の母集団形成が狙えます。
SNS採用のメリット③企業のブランディングツールになる
SNSは、会社のソフト面の情報発信が得意なツールです。
会社HPや採用HPよりもユーザーに近い位置から、会社理念、働き方、社風など企業のカルチャーが伝わるような情報を発信できます。
働きやすい職場環境への取り組み紹介、海外共同プロジェクトの様子、新卒入社社員の仕事レポートなど、社員の声が届くようなコンテンツも人気です。写真や動画を使ったオフィスの紹介や自然豊かな場所にある企業であれば地域の紹介なども、企業イメージを持ってもらうのに効果的でしょう。
SNS採用のメリット④ミスマッチ・アンマッチの防止
SNSで企業と候補者が繋がれば、企業側は候補者の発信を見ることができます。人々はSNSで日常の様子や興味関心、経験、指向性などを発信しています。候補者のパーソナリティーへの理解を深め、自社の社風とマッチするか検討することができます。
また、企業側は現役社員の投稿などを活用することで、企業で働くイメージをより具体的に持ってもらい、ミスマッチ・アンマッチの防止につなげることができます。
SNS採用のメリット⑤採用活動のコスト低減
SNSは、基本的に無料のプラットフォームです。純粋にSNSだけを活用して採用に至った場合、実質コストは採用担当者の工数のみとなるため、大幅なコスト減が見込めます。
既存の採用媒体とSNSを組み合わせて採用を行う場合も、様々なメリットが初期投資なしで得られるため、中長期で見た場合はコスト減となるでしょう。
SNS採用活動のデメリット
SNS採用活動のメリットを見てきましたが、SNS採用には不得意分野・デメリットもあります。
SNS採用のデメリット①運用工数がかかる
SNSでは日々大量の情報が発信されています。ユーザーには新着情報から表示されるため、一定の更新頻度がなければ投稿はすぐに埋もれ、見てもらえません。
また、SNSは双方向的なコミュニケーションが本質的なあり方です。そのため、企業の発信に誰かがコメント等のアクションをした場合、企業側もリアクションするのがマナーとなります。コミュニティのマナーを破れば企業のイメージダウンに繋がる恐れがあるため、注意が必要です。
日々の情報発信とリアクションへのフォロー、コンテンツ企画や発信情報チェックもあるため、全体でかなりの運用工数がかかります。
SNS採用のデメリット②事前に十分な運用計画を立てる必要がある
SNSで発信するコンテンツは、採用ターゲットの興味を惹く内容であることが大切です。プラットフォームによっては画像や動画の用意もあり、日々の更新を継続するためには、事前に十分な計画が必要となってきます。
採用ターゲットの興味をつかむコンテンツにはどんなものがあるか、自社コンテンツで有効なものは何か、事前に計画しておきましょう。
SNSを巡る動向は日々変化しているため、事前の十分なコンテンツプランニングと効果測定によるプランの見直しも肝心です。
SNS採用のデメリット③短期的な採用に不向き
SNSは短い情報発信を日々重ね、長期的に運用することで情報の拡散を狙います。
また、単に長期運用すればいいというだけではなく、フォロワー数を増やして行かなければ効果を期待できません。フォロワーのいない状態で、求人情報を発信してもほとんど誰の目にも留まらないからです。
SNSでしっかりと自社の魅力を伝えてフォロワーを増やし、採用候補者層へのアプローチを継続することで中長期的な採用へと繋がります。
SNS採用開始直後の即効性は期待できませんが、中長期的なメリットを狙っていきましょう。
SNS採用のデメリット④炎上リスクの大きさ
社会問題にもなっている「SNS上での炎上」。情報共有がしやすく、拡散性が高いというSNSの特徴によって、悪いイメージのついた情報も一瞬で広まってしまいます。
SNSへの投稿は不特定多数の人の目に触れるため、注意していても、意図しないところで批判を買ってしまうリスクが避けられません。そして、その批判への対応次第では雪だるま式に批判が膨らみ、炎上となってしまいます。
企業アカウントや企業採用アカウントは社名を背負っていますので、炎上リスク低減の仕組みが必要です。
実際にSNS採用活動で「炎上」してしまった事例
炎上リスクはどうすれば低減できるのか。実際の「炎上」事例から見てみましょう。
SNSを使用した採用活動での「炎上」事例
2022年2月、企業採用アカウントの炎上がメディアでも話題になりました。
その引き金となったのは、大炎上となった、ある採用担当者のTwitter上での発信です。
「新卒採用担当を採用したいと思い、沢山の方にご応募いただいているのですが、給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくないのです。。。私は、会社の顔となる人事だからこそ、待遇/給与で会社を選ぶ方と働きたいとは思わない。」
1月31日夜に配信されたこの投稿は、約3日で8000件以上もリツイートされ、そのうち批判的な引用リツイートが半数以上を占めました。
SNS採用活動での炎上がもたらす大きな傷
この投稿には「Twitterの投稿は切り取られやすいと思うが頑張って!」という応援のコメントも合った一方、「従業員搾取の典型的な考え方」等の批判の声が多くを占めました。
後日、社員は「あくまで私の意見」だったと釈明しましたが、この企業が出していた求人情報の待遇までが話題となり、こちらにも批判的なツイートが集まりました。
社員のアカウントは企業の実名も入っていたため、メディアによっては社名を含めての報道となったところもあり、企業イメージへの影響も避けられない結果となってしまいました。
SNS採用活動における最大のリスク「炎上」はなぜ起こる?
では、なぜこのような「炎上」は起こるのでしょうか?
SNSの炎上は「何気ない投稿」から始まる
SNSで炎上する流れは以下の通りです。
- 何気ない投稿
- 違和感を持った人が批判
- 批判に同調した人が拡散
- 「トレンドに上がる」「メディアが取り上げる」など、さらに拡散
- 「投稿から遠い人」や「SNSをやっていない人」にも悪評が届く
- 炎上する
初めは「悪気ない」「批判が来るとは予想できない」という何気ない投稿から始まるケースがほとんどです。また、「一部の文章が切り取られる」「画像の一部に注目される」など、投稿内容のメインではない
ですが、一部の人による批判が拡散され始めると、同調圧力でさらなる批判・拡散が集まり、手が付けられなくなります。
そして、メディアに取り上げられたり、著名人が反応したりすると、「投稿から遠い人」「SNSをやっていない人」まで広がる。これがSNSでの炎上の流れです。
炎上は拡散力があるSNSで起こりやすい
株式会社コムニコの調査によると、炎上元媒体の大半をTwitterが占めていることがわかります。
(出典:株式会社コムニコ「2021年SNS炎上レポート」)
Twitterは拡散力のあるSNSです。「多くの人の目に留まる」「話題になりやすい」というメリットがある半面で、炎上のリスクも持ち合わせています。
Twitterへの投稿が火種となり、引用リツイートやリプライなどで批判が集まることで「炎上」してしまいます。
また、拡散力があることに加えて、「気軽に投稿できる」「文章での投稿なので、違う意図で受け取られてしまう」といったことも、Twitterが炎上しやすいSNSである原因です。
SNS採用での炎上は「上から目線の投稿」が多い
SNS採用での炎上は「上から目線の発言」が火種になるケースが多くあります。
先ほど例に出したTwitterでの発言以外にも、「上から目線の発言」で炎上した例として以下があります。
「採用は”採ってはいけない人”を見極める仕事だ。最近意味がわかって来た。」
Twitterにて
「ボーナスは『毎月受け取る月給以上の結果を出した人』にしか支給できません」
Instagramのストーリーズにて
人事担当者は「人を評価する仕事」をしているが故に、「上から目線の投稿だ!」と捉えられてしまうことから「炎上」に繋がりやすいのです。
対応によってさらなる炎上を招くことも
1度炎上をしてしまうと、自力で止めるのは困難です。
炎上の対応によっては、「不誠実だ」「反省の色が見られない」「言い訳に聞こえる」など、さらなる炎上を招いてしまう場合もあります。
また、「過去の投稿を掘り返されてさらに炎上」「Twitter以外のSNSもチェックされて炎上」「HPや求人案内までチェックされて炎上」など、当該投稿以外の部分まで巻き込んで炎上することも少なくありません。
炎上を起こさないためにも、SNS採用をするにあたって事前に対策することが大切です。
SNS採用活動での炎上を防ぐためにできること
SNSでの発信には十分なネットリテラシーが必要です。SNSの運用を始める前に、トラブル予防ための事前対策をしっかりと行いましょう。
また、SNSで炎上するのは、SNSで発信された内容に限りません。
面接の内容、電話対応、メール返信等、全ての企業と候補者のやりとりはSNS上で共有され、炎上のきっかけになる可能性があります。
SNSの登場以来、採用・就職活動には従来の「企業が選ぶ側、応募者は選ばれる側」という構造にパラダイムシフトが起きています。
採用担当者や企業は「適切な候補者を選ぶ」ではなく、「最適な候補者に選ばれる」ことをミッションとして活動を行う必要があるのかもしれません。
思わぬSNS炎上を防ぐために知っておくべき【就活生の価値観】
近年の就活生は「仕事よりも私生活」「やりがいよりも給与や待遇」という価値観を持つ人が増えています。思わぬSNS炎上を防ぐためには、こういった近年の就活生の価値観を知っておく必要があります。
なぜなら、SNS採用での炎上は「何気ない投稿」が火種になってしまうことが多く、「まさかこの投稿が炎上するとは思わなかった」というケースが多いためです。
特に近年はSNSの影響でさまざまな価値観が現れており、変化も激しい時代です。変化に合わせて発信内容も変えていく必要があるでしょう。
ここでは、日本生産性本部「新入社員意識調査」を参考に、「近年で増えた価値観」「減った価値観」を紹介していきます。
<増えた価値観>
- 働く目的は「楽しい生活をするため」
- 働き方は「人並みで十分」
- 仕事よりも私生活を重視したい
- 職場の上司、同僚が残業していても、自分の仕事が終わったら帰る
- 仕事はお金を稼ぐための手段であって面白いものではない
- 職場の同僚、上司、部下などとは勤務時間以外はつきあいたくない
<減った価値観>
- 働く目的は「自分の能力を試したいから」
- 働き方は「人一倍働きたい」
- 若いうちは進んで苦労すべき
- あまり収入がよくなくても、やり甲斐のある仕事がしたい
- 面白い仕事であれば、収入が少なくても構わない
- 人間関係では、先輩と後輩など上下のけじめをつけることは大切なことだ
これらの傾向を見ると、人事担当の ”給与や待遇にこだわりのある人とは働きたくない” ”ボーナスは『毎月受け取る月給以上の結果を出した人』にしか支給できません” という発信が炎上してしまったのも、近年の就活生との価値観が合わなかったことが理由かもしれません。
近年の就活生は「仕事よりも私生活」「やりがいよりも給与や待遇」という価値観を持つ人が増えているため、こういった傾向に合わせてSNS発信を進める必要があるでしょう。
SNS採用の企業における活用方法
現在SNSを採用活動に活用している企業では、主に下記のような活用方法があります。
・企業の認知度を上げるための情報発信ツールとして活用
活用例:Facebookで「企業アカウント」を運用し、企業の様々な情報を更新する
・採用専用の特設サイトとして活用
活用例:Twitterで企業公式の「2022新卒採用アカウント」、「エンジニア中途採用アカウント」等を運用し各種情報の発信を行う
・求職者と直接コミュニケーションを取るツールとして活用
活用例:Lineのビジネスアカウントを利用して候補者プールを作り、直接連絡の手段にする
SNSを活用した採用戦略を考える
メリット・デメリットを確認したところで、次はいよいよ採用戦略の中にSNSを取り入れる方法を具体的に考えてみます。
SNSの採用戦略1:従来の採用手法との併用で効果を高める
これからSNSの活用を始める企業では、まずは従来の採用手法・媒体との併用をおすすめします。
求人情報の展開を行うにしても、SNS採用では中長期運用で先に一定のフォロワー数獲得が必要だからです。
また、SNSから流入する候補者をランディングさせる自社採用ページまたはSNSと連携可能な採用管理システム等も運用しておく必要があります。
SNSの採用戦略2:採用ターゲットに合うSNSを選定する
次に、自社の採用ターゲットに合ったSNSプラットフォームを選びます。
総務省の2020年のデータでは、各年代ごとにSNSサービスの普及率が異なることがわかります。自社の採用候補者が活動しているプラットフォームで情報発信を行うことが重要です。
出典:総務省「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」
SNSの採用戦略3:SNS採用に与える役割を明確にする
次に自社採用戦略の中で、SNSに与える役割を明確にしておきます。役割が明確になっていることで、既存の採用ツールとの連携・棲み分けがしやすく、コンセプトのある運用に効果的です。
役割には次のようなものが考えられます。
- 企業の認知度を上げるための情報発信ツールとして活用
- 採用専用の特設サイトとして活用
- 求職者と直接コミュニケーションを取るツールとして活用
採用戦略の中でのSNSの役割は、中長期運用の中で随時見直していきましょう。SNSを使った直接採用の形に近づけることができれば、採用コストの低減にも繋がります。
SNSの採用戦略4:配信コンテンツの企画をする
プラットフォームとSNSの役割が決まったら、配信するコンテンツの企画をしましょう。SNSでは一定以上の更新頻度で中長期運用することが基本です。そのためには、事前にコンテンツ計画を立てておきましょう。
また、SNSプラットフォームの種類によって動画主体(Tiktokなど)、静止画像主体(Instagramなど)、テキスト主体(Twitterなど)等の特徴があります。プラットフォームの得意とする発信フォーマットでコンテンツを準備する必要があります。
コンテンツ内容には、SNSで好まれる種類の情報(双方にとってよりリアルで、身近で、即時性がある)を含めるのがおすすめです。
SNSの採用戦略5:継続的に発信する社内体制を作る
SNSの活用は、従来の採用手法にはない様々な効果があります。
一方、採用担当者にとってはプラスの業務となり、大きな負担にもなりかねません。コンテンツ作成・チェック・配信は、1人で行うのではなく、社内の協力を仰ぐのが良いでしょう。
ソーシャルメディア上では、企業等のオフィシャルのコンテンツよりも、その社員作成のコンテンツの方が相性が良いというリサーチもあります(社員発信の投稿は、企業オフィシャルに比べ最大24倍もシェアされる)。
SNSの採用効果を引き出すためには、PDCAサイクルを回しながら、継続的な発信を続けられる体制を用意することが重要です。
SNS採用で効果を出すために必要なこと
SNS採用で効果を出すには、自社の採用候補者層がよく使うSNSを選ぶ必要があります。
プラットフォームごとの特徴も把握し、自社の採用戦略に合ったSNSを選定しましょう。
SNSプラットフォーム | 国内の普及状況 | 特徴 |
---|---|---|
LINE | 全年代での普及率90%以上 | アカウント間の1対1コミュニケーションが得意 |
20代で80%に届く普及率 | リツイートという機能で高い拡散力を持つ | |
10代の普及率は低いが20代〜40代で普及 | 登録アカウントの実名性が最も高い | |
10代〜30代の若手世代で普及率が高い | ハッシュタグ機能で拡散も見込める | |
TikTok | 10代の普及率が近年爆発的に増えている | 短い動画による投稿を共有するのが特徴 |
年齢層についても考慮する必要があります。総務省の調査によると、コミュニケーション系メディアの行為者率は、10代~40代でSNSが1位となっていますが、50代以上ではメール行為者率の方が高いことがわかっています。
そのため、50代以上の採用を行う場合は、SNS以外も積極的に利用する必要があるでしょう。
SNS採用に使えるサービスは?それぞれの特徴や成功事例
サービス | メリット | デメリット |
---|---|---|
拡散力があり、大きな話題になることも | 情報の流れの早く、読んでもらえないことも | |
実名で登録しているユーザーが多い | 若年層の利用者は少ない | |
tiktok | 10代20代のユーザーが多い | 動画コンテンツを作りこむ必要がある |
視覚的な訴求効果が高い | 文字情報を載せるのは難しい |
SNS採用に使えるサービスの特徴と成功事例を紹介していきます。
- サービス①Twitter
- サービス②Facebook
- サービス③TikTok
- サービス④Instagram
サービス①拡散力が高い「Twitter」
Twitterは140字の文章での投稿がメインのSNSです。
Twitterの特徴
大きな強みは「拡散力」。ユーザーは「拡散させたい」「他の人にも見てほしい」と思った投稿をリツイート(シェア)できるため、連鎖的に投稿が拡散されて大きな話題になる(バズる)ことがあります。
一方で、拡散力の高さから、ネガティブな投稿や不適切な投稿も一気に拡散されるため「炎上」につながりやすいSNSでもあります。
炎上を避けてコツコツと影響力を上げるためにも、Twitterを始める際は、事前にルールやガイドラインを用意してブレない・中長期的な運用を目指しましょう。
Twitterの成功事例
Twitterの企業アカウントの成功事例を簡単に紹介いたします。詳しくは関連記事で解説しているので、そちらも参考にしてみてください。
- 楽天グループ株式会社…複数のグループアカウントで発信
- 株式会社セールスフォース・ジャパン…豊富なコンテンツや、カジュアルなツイートも
- 大和製衡株式会社…企業ブランディングをしつつ、採用情報も掲載
こちらの記事ではTwitterの特徴や成功事例をさらに詳しく解説しています。
サービス②世界最大のSNS「Facebook」
Facebookは世界最大のSNSサービスです。
Facebookの特徴
Facebookは世界でのユーザー数が最も多く、機能が豊富なSNS。日本においてはTwitterやInstagramと同程度のユーザー数で、利用者は主に30代・40代が多いのが特徴です。
若年層のリーチに課題がありますが、Facebookは実名で登録しているユーザーも多いため、候補者にアプローチしやすくなっています。
ターゲットや運用方針を固めてFacebookを活用していきましょう。
Facebookの成功事例
Facebookの企業アカウントの成功事例を簡単に紹介いたします。詳しくは関連記事で解説しているので、そちらも参考にしてみてください。
- ソフトバンク株式会社…新卒採用とキャリア採用を使い分けて掲載
- ハウスコム株式会社…複数メディアの連携運用で周知力アップ
- ノアインドアステージ株式会社…Facebookの拡散力をフル活用
こちらの記事ではFacebookの特徴や成功事例をさらに詳しく解説しています。
サービス③動画特化のSNS「TikTok」
TikTokは中国発の短尺動画に特化したSNSです。短尺の動画で手軽に視聴できることが若者の間で人気を集めており、ユーザー数は年々増加しています。
TikTokの特徴
TikTokはユーザーのおよそ半数を10代~20代が占めており、若年層の間で利用されています。
日本でサービスを開始したのは2017年と新しく、早期参入が見込めるSNSでもあります。
ただ、TikTokのユーザーは10代・20代の流行に過敏な層なので、トレンドに合わせたコンテンツ作りが重要となるでしょう。
TikTokの成功事例
TikTokの企業アカウントの成功事例を簡単に紹介いたします。詳しくは関連記事で解説しているので、そちらも参考にしてみてください。
- 全日本空輸株式会社(ANA)…身近でカジュアルな雰囲気作り
- ロート製薬株式会社…ユーザーとのコミュニケーションを重視
- 冒険社プラコレ…社風がそのまま伝わる好感度大の採用動画
<<TikTokの関連記事もチェック>>
こちらの記事ではTikTokの特徴や成功事例をさらに詳しく解説しています。
サービス④若年層の7割が利用「Instagram」
Instagram(インスタグラム)は画像での投稿が中心のSNSで、10代と20代の約7割が、30代の約5割が利用している人気サービスです。
Instagramの特徴
Instagramは画像または動画での投稿が必須の、ビジュアル性に優れたSNSです。
10代20代の若年層にアプローチでき、画像や動画で社風を伝えられます。
ただ、文字情報を多く載せられないため、画像や動画でメッセージを伝える工夫が必要です。
Instagramの成功事例
Instagramの企業アカウントの成功事例を簡単に紹介いたします。詳しくは関連記事で解説しているので、そちらも参考にしてみてください。
- 株式会社サイバーエージェント…求職者に読ませる豊富なコンテンツ
- 株式会社ウエディングパーク…内定者と人事で運営するアカウント
- 西日本プラント工業株式会社…「映える」写真でなくともコンテンツで魅せる
こちらの記事ではInstagramの特徴や成功事例をさらに詳しく解説しています。
SNS採用は採用活動の何を変えるのか?元採用担当者の視点から
これまで見てきたように、従来の採用ツールにない様々なメリットのあるSNSですが、このトレンドが続くと今後どのような影響があるのでしょうか。SNS採用は、これまでの採用活動の何かを大きく変える可能性があるのでしょうか…?
最後に、ここで少し視点を引いて考えてみます。
「採用活動の基本姿勢」は変わらない
現在、日本における「SNS採用」の実態は、多くが「SNSを取り入れた採用活動」となっています。従来の自社採用ページや求人サイトでの採用広告にプラスして、SNSでも採用広報を行う形です。
この場合、採用ツールとしてのSNSの使い方は、率直に言ってこれまでの求人媒体とあまり変わりません。求人雑誌、自社採用ページや求人サイトという就職活動者だけが見る媒体から、より多くの一般の人が普段見ているメディアにその舞台を移しただけと言えます。
SNSというソーシャルプラットフォームを利用することで
・無料で、こまめに、総じてよりたくさんの情報を発信できるようになった
・情報の発信者と情報の受信者が、気軽に相互コミュニケーションが取れるようになった
と言えますが、「情報発信」と「コミュニケーション」は、従来の採用媒体でもやっていたこと。ただ、その濃さが変わりました。
そのため「採用活動の基本姿勢は従来と同じでOK」で「より細やかに対応する」ことがポイントです。
- ツールのマナーを守ってマメに情報を提供し、企業のファンになってくれる方を増やす
- ファンとのコミュニケーションを大事にし、興味を持ってくれた方全員に真摯な気持ちで対応する
日本以外でのSNS採用の動向
日本よりも先にSNS採用が本格化した米国の状況をみてみると、SNSは「ダイレクトリクルーティング」のツールとなっているケースが多いようです。ダイレクトリクルーティングとは、企業の採用担当者等が志望動機のない状態の候補者を自分たちで見つけ、求職者と交渉し採用するフローをさします。
ダイレクトリクルーティングでのSNS活用例:
- LinkedInなどのビジネス系SNSを使い、企業から欲しい人材に直接スカウトを行う
- Facebookなど各種SNSで母集団形成を行い、欲しい人材を見つけたら直接コンタクトする
- SNSで社員や企業関係者など多くの人と繋がっておき、採用広報や求人情報の展開を行い、拡散させ、人材を紹介してもらう(リファラル採用)
ただし、上記の例からもイメージできるように、SNS上でダイレクトリクルーティングを行うにはユーザーがSNSをビジネスの場面でも使用している必要があります。
これは、SNS上では基本匿名で個人情報は公開せず、プライベート用と仕事用でアカウントを分けることが少なくない日本とは使い方が異なる印象です。
日本では一般の方(学生含む)がSNSで個人の所属・仕事等を明らかにし、社会的なコネクション作りに利用するシーンがあまり育っていません。日本の企業では、SONYさんがLinkedIn(リンクトイン)を使って積極的に採用活動をされていますが、海外人材や日本人でも海外志向を持つ方向けの採用フローではないかと思います。
しかし最近、日本においても、SNSをプライベートと仕事を分けず「新しい社会的なつながり」作りに利用する人が増えてきています。
特に、キャリア構築上も個人での開業や副業が常識になりつつあるIT・デザイン・クリエイティブ関連職の方々は、SNSでのつながりが新たなプロジェクトのきっかけとなることも多いようです。
2018年に厚生労働省が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成し副業を推奨、その後パンデミックによるテレワークが増えたことも背景となり、副業を認める企業も増えてきました。
日本の働き方や働き方に関する考え方、個人と社会との繋がり方が、今大きく変わろうとしているのかもしれません。
参考:
厚生労働省 副業・兼業の促進に関するガイドライン
株式会社パーソル総合研究所 2021年 副業に関する調査結果(企業編)
変わるのは「採用活動の使用ツールと求職者との距離感」
ところで、日本でも10代に圧倒的人気のTikTokは、2020年7月にアメリカで「TikTok Rsumes(パイロット版)」を発表しました。
参考:Find a job with TikTok Resumes
「この新サービスはTikTokを【採用と仕事探しの新しいチャネル】として拡大・強化するためのもの」との発表なので、これはTikTokに求人・採用マッチング機能を持たせるものです。TikTokは応募を受け付ける企業を掲載し、興味のあるユーザーは動画履歴書(Video Resume)をダイレクトに企業に送付することで、選考が開始されます。
このサービスが定着し、日本でもそれを常識と感じる10代が増えれば、SNSでのダイレクト求人・求人応募の世界に風穴が開く可能性を強く感じます。
SNS採用によって変わるのは、採用ツール(紙→デジタル文書→動画)と、企業と求職者の距離感なのかもしれません。
まとめ:SNS採用には様々な効果あり!
これまで見てきたように、SNSの活用には様々な効果があり、今後の採用戦略においてその重要性は年々高まりそうです。
採用担当者としては、仕事が増えるだけでは…と二の足を踏んでしまいそうですが、従来の採用手法が不得意な部分をカバーするツールであることも事実。
メリット・デメリットを十分に検討した上、中長期的な視点で自社の採用戦略に取り入れていってはいかがでしょうか。