SNSを使った採用活動が、今ますます注目されてきています。本記事ではSNS採用の中でも、2017年のサービス開始から急成長を遂げたTikTok(ティックトック)を取り上げます。
「SNS採用活動と言ってもどのSNSがウチに合ってるのか?」「TwitterやInstagramは分かるけど、TikTokで本当に採用できるのか?」と疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
他のSNSとの違いやプラットフォームの特徴、メリット・デメリットを簡単にまとめ、参考にしたい事例を元採用担当者が紹介します。
TikTokを活用したSNS採用の導入を検討中の方はぜひ参考にしてください。
SNS採用の効果や活用法についてはこちらで詳しく解説しています。
TikTok(ティックトック)とは?他のSNSとの比較でわかる!
TikTok(ティックトック)は中国のIT企業Byte Dance(バイトダンス)社が提供している、スマートフォン用・短尺動画に特化したSNSです。
誰でも簡単に高品質の動画を投稿できたり、他の投稿者の動画が自分の好みに合わせてランダムで視聴できるなど、独特の機能が人気を集めています。
2021年にアメリカのAppAnnie社が実施した調査によると、パンデミックを境に米国と英国においてTikTokの利用時間がYouTubeを上回ったことが明らかになりました。日本と韓国では依然、YoutubeがTikTokの2.5倍の利用時間を占めていますが、SNS先進国である米・英の傾向は見逃せません。
まずはそんなTikTokにどのような特徴があるのか見て行きましょう。
TikTokのユーザー数
人気SNS国内ユーザー数 まとめ
国内ユーザー数 | ユーザー層 | ユーザーの動向 | |
---|---|---|---|
4,800万 | 10代と20代の約7割が利用 | 国内ユーザーはまだまだ増加傾向 | |
5,550万 | 20代での普及率が高い | 10代~40代まで幅広い層で普及 | |
4,909万 | 30代の利用者が多い | 若年層では登録者数が減少傾向 | |
TikTok | 950万 | ユーザーの50%が10代・20代 | 10代で登録者数が急上昇 |
日本のユーザー数参考サイト:
TikTokはコミュニケーションプラットフォームとして2019年の日本でどう進化するか
TikTokの最新のユーザー数は、公式発表で全世界で10億人(2021年9月)、日本で950万人(2019年)となっています。
App Storeでのアプリダウンロード数は2019年からほぼ毎月1位となっているため、2022年の日本のユーザー数はさらに多くなっていると予想できます。
TikTokの世代別利用率
出典:総務省
2020年の総務省の調査では、日本のユーザーの57%が10代、28%が20代となっており、まずは10代を中心に支持を得たことが分かります。
翌2021年には日本のユーザーの平均年齢が34歳という調査結果も出てきているので、ユーザー数の増加とともに、30代以上のユーザー層も厚くなってきているようです。(参考サイト:日本の TikTok ユーザーは平均34歳、博報堂調査が示す実態 : 要点まとめ)
TikTokの強み・弱み・特徴
人気SNS強み・弱み まとめ
強み | 弱み | |
---|---|---|
大きな画像での投稿が中心 視覚的な訴求効果が高い | 文字情報をたくさん載せることは不得意 | |
140文字の短文投稿が中心 リアルタイム性や拡散力に優れる | 投稿面積が小さく、流し読みされやすい 炎上リスク大(炎上事故が多い) | |
投稿の自由度が最も高い 実名登録ユーザーが多い | 若年層のFacebook離れが進行中 アカウントを持っていないと投稿が見られない | |
TikTok | SNSで今後キーとなる動画中心 若年層からの指示 | 投稿コンテンツ(動画)の企画力やトレンド調査が必要 |
どの国でも若年層の支持を集めたTikTokの短尺動画の流行は、他のSNSプラットフォームへも大きな影響を与えました。Instagramには「リール」や「ストーリーズ」が生まれ、YouTubeも「YouTubeショート」として短い動画のサービスを開始しています。
今後、SNSはどのプラットフォームでも動画コンテンツが中心となっていくとの見方もあり、長めの動画サービスも始めつつあるTikTokの動向には目が離せません。
同じく動画が人気コンテンツであるInstagramやYouTubeとTikTokの違いを上げてみましょう。
- 15秒から3分の短い動画のため、少しの時間でたくさんのコンテンツが視聴できる
- スマホアプリながら優れた動画編集機能がついている
- 動画に組み合わせることができる効果素材や音楽素材の豊富さ
- フォロワーが少なくとも独自の「レコメンド」機能により拡散が期待できる
- ユーザー参加型の広告性のあるイベントが多い(ハッシュタグチャレンジなど)
特に、4)のレコメンド機能はTikTokの人気の秘密となっています。ユーザーのアプリ内行動データ及び動画の特徴等をAIが分析し、視聴者の興味関心に合った動画を次々に「おすすめ」する機能です。
レコメンド機能は他のSNSと比べても精度がよく、「おすすめ」に対するユーザーからの信頼度も高いという特徴がと比べても
この機能により、フォロワーでないユーザーにも「おすすめ」表示されるため、自分のアカウントのフォロワー数が少なくとも多くの人へ知ってもらうチャンスとなっています。
TikTokの弱みとしては、効果のある動画コンテンツにするためには、内容の企画力やトレンドに乗るための日々の調査が必要なところでしょう。
TikTok採用が注目されている理由
TikTok採用が注目されているのには理由があります。
- 動画コンテンツの利用時間は増加傾向
- TikTokはエンゲージメント率が高い
- TikTokの企業動画は影響力がある
動画コンテンツの利用時間は増加傾向
総務省の調査によると、10代・20代の動画コンテンツの利用時間は増え続けています。
単位:分 | 平成28年度 | 平成29年度 | 平成30年度 | 令和元年度 | 令和2年度 | 令和3年度 |
---|---|---|---|---|---|---|
10代 | 62.2 | 73.7 | 95.4 | 114.8 | 131.8 | 129.9 |
20代 | 50.6 | 53.8 | 70.2 | 69.0 | 115.9 | 110.1 |
30代 | 15.8 | 25.5 | 33.0 | 44.1 | 58.4 | 72.8 |
出典:総務省
これからも若年層を中心に動画投稿サービスは伸び続けることが予想されています。TikTokのような動画を中心としたSNSは採用活動においてもますます有効な手段となるでしょう。
TikTokはエンゲージメント率が高い
TikTokは他のSNSと比べて高いエンゲージメント率を誇ります。エンゲージメント率とは「投稿に反応したユーザーの割合」のことで、マーケティングにおいて重要な指標です。
SNS | エンゲージメント率 |
---|---|
TikTok | 5.96% |
0.83% | |
0.13% | |
0.05% |
出典:New Study: TikTok Industry Engagement Benchmarks for 2022
エンゲージメント率が高いということは、つまりユーザーが気軽に反応しやすいSNSと言えます。
採用活動においても、「興味を持ってくれる」「実際に採用ページにアクセスしてくれる」など、エンゲージメントが期待できるでしょう。
TikTokの企業動画は影響力がある
実際に「23卒の学生の81%がTikTokで企業動画を見たことがある」と回答しており、「そのうち66.2%が実際にエントリーした経験がある」と答えており、TikTokは採用活動に効果的であることがわかっています。
とくに、「社員のコミュニケーションの様子」や「実際の仕事の様子」など、職場環境をイメージしやすい動画に関心が高いことがわかっており、TikTok採用は動画コンテンツの特性を生かした運用がカギとなりそうです。
TikTok採用のメリット・デメリット
次に、TikTokを使った採用にどんなメリット・デメリットがあるか見ていきましょう。
- 早期参入で競合他社と差別化を図ることができる
- 新卒採用だけじゃない!潜在候補者発掘も
- 一般ユーザーと近い距離でコミュニケーションすることが可能
- 炎上リスクがある
- 動画の作成・編集、トレンドリサーチが必要
- ポジティブな面ばかりの情報提供になりがち
TikTok採用のメリット
早期参入で競合他社と差別化を図ることができる
TikTokが日本でサービスを開始したのは2017年。最初は若年層むけのエンターテイメント系SNSとして認知が進んだためか、企業がマーケティングなどのビジネスユースのプラットフォームとして注目し始めたのは最近のことです。
すでにたくさんの企業がブランドアカウント、採用アカウントを持っているTwitterやInstagramに比べればTikTokには競合他社が少ないと言えるでしょう。
早期参入により、今からアカウントを育てていくメリットは十分あります。
新卒採用だけじゃない!潜在候補者層発掘も
現在、10代〜20代の新卒層・若年層へのアプローチに有効とされているTikTokですが、ユーザー平均年齢の変化とともに、30代以上の転職層へもリーチ可能です。
TikTok特有の「レコメンド機能」で興味関心の合うユーザーに見てもらえることから、自社のサービス・製品・社風などを動画で伝えることでまだ出会えていないユーザーにも企業や業界を知ってもらうきっかけにもなります。
また、現在TikTokは「検索不要」のアプリと言われています。「おすすめ」によって自ら検索しなくとも好みに合った動画が次々と流れるため、それを楽しむユーザーが多いようです。
したがって、投稿内容を工夫すれば、就職・転職活動をしていない潜在候補者層の掘り起こし効果もあります。
ユーザーと近い距離でコミュニケーションできる
TikTokのコンテンツは「気取らない」「面白い」「自然体な」動画に人気が集まる傾向があります。このカジュアルな雰囲気から、視聴者が投稿に気軽にコメントを残しやすく、投稿者も短く飾らない回答ができます。
また、TikTokには動画の投稿と視聴者とのやりとり全体が一つのコンテンツとなり、それを楽しむカルチャーがあります。
コミュニケーションによって親近感を感じてもらい、もっと興味を持ってもらえるブランディングが可能です。求人情報などを出した際には、問い合わせ等のハードルを下げることにもつながります。
TikTok採用のデメリット
炎上リスクがある
SNSを使った広報活動全般について回るリスクですが、TikTokも炎上リスクがあります。
投稿内容、ユーザーコメントへの返信等に配慮に欠けるところがあれば、ネガティブな評価のまま拡散してしまいます。
担当者のメディアリテラシーに関する教育とともに、ビジネス色を出しすぎない、ユーザーが面白いと思う投稿を行うなどTikTokのコミュニティーの雰囲気に合ったコンテンツ内容にすることも重要です。
また、新卒採用にありがちな「内定者や新入社員を『安易に使った』コンテンツ作り」にも賛否両論があります。アカウント運用開始時にしっかりとコンセプトを作り、ターゲットユーザーの絞り込みと、何をどのように伝えたいか計画に沿った運用をしましょう。
トレンドサーチと需要に沿ったコンテンツ企画が必要
TikTokでは、プラットフォーム内で常時さまざまなトレンドが巻き起こっており、それに乗ったコンテンツが人気を博します。トレンドにはハッシュタグや音楽、コメントの言い回しなど多様な要素があり、数日でどんどん変わっていきます。
せっかく作るコンテンツをより多くの人に見てもらうには、日々のトレンドサーチが大切です。また「ターゲットユーザーがどんな動画を好むのか?」など、需要のリサーチに基づいたコンテンツ企画が必要になります。
ポジティブな面ばかりの情報提供になりがち
TikTokはプラットフォームの雰囲気全体としてエンターティメント性を帯びています。そのため、明るく、ポジティブな内容の投稿に偏りがちで、入社後ミスマッチにつながりかねません。
採用広報ということを考えると、やりがいの背後にある努力や仕事の大変さも伝えたいところですが、音楽付きの短尺動画では難しいところもあります。
ユーザーに届ける情報が仕事の楽しそうな所ばかりに集中しないよう、コンテンツに工夫をするか、他のメディアとの並行運用をして企業をより深く知ってもらうための工夫をする必要があります。
また、TikTokには静止コンテンツがないため、文字の多い詳細情報の発信には向いていません。単体では採用プラットフォームにならないため、自社サイトや採用サイト等に誘導するような導線を引いておきましょう。
TikTok採用のFAQ
TikTok採用・求人動画 企業アカウント成功事例と参考ポイント
元採用担当として「ぜひ参考にしたい」と思った、企業アカウントの事例を紹介します。
TikTok採用事例① 全日本空輸株式会社(ANA) 身近でカジュアルな雰囲気作り
全日空(ANA)さんのアカウントは会社のブランドアカウント兼採用アカウントとして運営されています。
<参考にしたいポイント!> ・社員が企画、登場の動画で飛行機好きから学生まで親近感の湧く内容に ・乗客としては普段接することのない、さまざまな業務に従事する人の紹介も ・各職種の制服紹介など、動画と親和性の高いカジュアルな投稿も好感度大
TikTok採用事例②:ロート製薬株式会社 ユーザーとのコミュニケーションを重視
明治創業の老舗製薬企業であるロート製薬さんの公式アカウントです。採用アカウントではありませんが、ユーザー目線に立ったコンテンツ作りで、思わずフォローしたくなる仕掛けがいっぱいあります。
ユーザーのコメントにこまめに回答しているところや、ユーザーに「なんでも聞いてね!」と投げかけている投稿では、そのやりとり自体から社風が伝わってくる秀逸な運用です。
<参考にしたいポイント!>
・ユーザー(=消費者)とのコミュニケーションの場としてアカウントを運営
・ユーザーが知りたいと思う内容のコンテンツ設計
・トレンドも活用して、ユーザーとカジュアルで距離感の近い雰囲気作り
TikTok採用事例③:冒険社プラコレ 社風がそのまま伝わる好感度大の採用動画
アパレル業界は、TikTokと相性がいい業界の一つです。トレンドに敏感な若い女性がユーザー層に多く、動画を通して商品の魅力をより伝えられます。
冒険社プラコレさんはオリジナルドレスの販売等を行なっている会社ですが、投稿内容を変えてTikTokだけで4つ以上のアカウントを運用しています。
その中でも広報アカウントでは、自然体の社員が登場。若手社員が活き活きと働く様子や、どんな風に成長できるのかなど、就職後の自分を想像することができる内容になっています。
<参考にしたいポイント!> ・いやらしさのない、好感度の高い求人動画。仕事のリアルもさりげなく発信 ・コメントでの丁寧なコミュニケーションがユーザーの不安を取り除く要素に ・1プラットフォーム複数アカウント運営でブランディングとマーケティングを両立
TikTok採用は「あり」か「なし」か?!
TikTokで人気の動画を見て、今の採用広報にどう使うかを考えるのは、昔の採用方法に馴染んでいる担当者にとっては中々のハードルではないでしょうか。私も「これって…社員と踊ればいいのか?」と、戸惑った1人です。
けれどTikTokは、SNSが根本的にそうであるように、コミュニケーションツールです。情報発信のフォームは違えど、自社のことを自社に興味を持ちそうな人に知ってもらうという採用広報の基本は変わりません。
TikTokユーザーは時代に敏感な、新しいコミュニケーションのあり方の体現者です。プラットフォームのルールや雰囲気に沿って振る舞う必要はありますが、まずは、ユーザーに胸を借りるつもりで企業アカウントを運営してみるのは「あり」だと思います。
「若者が踊る動画のSNS」というイメージではなく、ユーザーと企業が同じ目線でやりとりできる新しいツールという視点で捉え直すと、採用媒体の一つとして取り入れやすいかもしれませんね。
TikTok採用を成功させるポイント
TikTok採用を成功させるポイントをまとめした。
- 職場の雰囲気がわかる動画コンテンツを作成する
- リアルで親近感が湧く発信を心がける
- 複数メディアの連携運用で効果を狙う
TikTok採用のポイント①職場の雰囲気がわかる動画コンテンツを作成する
TikTok採用のポイントとして「職場の雰囲気がわかる動画を作成する」ことが重要です。
株式会社Suneightの調査でも、TikTokでフォローしたいと思うコンテンツとして上位に挙がったのは「社員のコミュニケーションの様子」や「実際の仕事の様子」など、職場内の雰囲気がわかる内容でした。
実際に「ANA」や「プラコレ」の事例を見ても社員の様子が多く投稿されていることから、ユーザーは「どんな職場かわかるコンテンツ」を知りたい傾向にあります。
TikTok採用のポイント②リアルで親近感が湧く発信を心がける
TikTokはリアルで親近感の湧く発信を心がけましょう。
TikTokは明るく、ポジティブな内容の投稿に偏ってしまいがちですが、入社後ミスマッチにつながりかねません。
自然体の様子や、社員が活き活きと働く様子など、求職者が就職後の自分を想像できる内容にするのがポイントです。
TikTok採用のポイント③複数メディアの連携運用で効果を狙う
TikTokは企業アカウントの投稿や広告が一般の投稿に馴染みやすく、プラットフォーム全体がカジュアルな雰囲気でユーザーとの距離を縮めやすい点が特徴です。
親しみやすいコンテンツ作りとTikTok内のトレンドを意識することで、独特のレコメンド機能により、これまで出会えていなかったユーザーにリーチできます。
TikTokを企業の認知向上ツールとして運用し、他のSNSや媒体をより理解を深めてもらうためのツールにする等、複数メディアの連携運用で採用・求人効果を狙いましょう。