【図解】ファネル分析で採用マーケティングの課題を解決する方法

採用マーケティングにおいて重要なキーワード「ファネル」と「ペルソナ」。「ペルソナ」はなんとなくわかりますが、「ファネル」は聞き慣れない言葉ですよね。

ファネルは「じょうご(漏斗)」のことで、マーケティングにおいては、見込み顧客がサービス購入に至る様子を図式化したモデルを指します。このモデルに沿って分析を進めることで、自社の採用プロセスにおける課題が見えてきます。

元採用担当者が、実際の採用活動の中での活用方法を含めて「ファネル分析」をわかりやすく解説します。

採用マーケティングでのファネル分析は難しい?

いいえ。視覚化されたモデルで、パッと見て全体像がつかめるため、誰でも簡単に導入できます。初めて採用戦略に採用マーケティングを取り入れる際は、基本となる「ペルソナ設計」と「ファネル分析」のセットがおすすめです。

採用マーケティングでのファネル分析、何ができる?

ファネル分析は、採用プロセスの中で「どこに課題があって採用がうまくいっていないのか(=ボトルネック)」を見つけるのが得意なフレームワークです。また、ファネル分析とプロセスの改善を繰り返すことで、最終的には「採用したい人材の入社」という結果に繋げることができます。

採用活動のファネル分析をやったほうがいいのはどんなケース?

ファネル分析を取り入れたほうがいいケースは、下記3つです。
・手っ取り早く採用プロセスの問題点を発見し、対策を打ちたい
・採用マーケティング手法を取り入れてプロセスを改善したいが全部やっている暇はない
・忙しすぎて自分で採用プロセスの現状分析ができない

採用活動全体を眺めることができ、注力すべき改善ポイントが見えやすいファネル分析は忙しい担当者におすすめです。

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目次

そもそもファネル分析とは?

ファネル分析とは、見込み顧客がサービス購入に至るプロセスを図式化した「マーケティング用語」です。

まず簡単に、マーケティングにおけるファネル分析の手法を説明しましょう。

ファネル分析では、顧客の行動プロセスと意識の変化に注目し、それに伴う人数の変化を図式化したモデルを使用します。

この図の形が「漏斗(じょうご)=英語でFunnel(ファネル)」に似ていることから、ファネル分析の名前が付いています。

ファネルの一番上の層は、商品やサービスを利用する見込み顧客(潜在顧客も含む)が自社の商品・サービスを「認知」するフェーズです。
そこからサービス購入に至るまでのプロセスを大きく3つに分け、全部で4つのプロセスを想定します。

パーチェスモデルによる顧客の行動の想定

「商品やサービスを知る(認知)」
 ↓
「商品やサービスに興味、関心を持つ(興味・関心)」
 ↓
「購入を考え始め、比較検討をする(比較・検討)」
 ↓
「購入、取引開始する(購入)」

次に、上記プロセスそれぞれに目標を設定し、達成率と離脱率を測定してプロセスごとに改善をはかります。分析と改善を繰り返すことでプロセスが最適化され、最終的に購入に至るまでの顧客を増やすことができる仕組みです。

また、プロセスごとに歩留まりがわかると、最も上手くいっていないプロセスが可視化されます。そのプロセスを「ボトルネック(ワークフローのなかの停滞箇所)」として検証し、優先・重点的に対策を取る意思決定もできます。

ボトルネックが解消されれば顧客の離脱率が低下し、購入に至るまでの顧客を効率的に増やすことができます。

人を採用したことがある方なら、もうすでに採用プロセスとの類似性にお気づきではないでしょうか。マーケティングの考え方が採用活動にも応用ができるのは、そもそもこの「顧客の購買に至るまでのプロセス」が求職者の就職・転職活動の行動に類似しているからなんですね。

ファネル分析の3つの種類とファネル分析の進化

ファネル分析の種類
  • パーチェスファネル
  • ダブルファネル・インフルエンスファネル
  • ルーピングファネル

ファネル分析は、時代の流れやその他のマーケティングの考え方と影響しあって、モデルを改良してきました。また、インターネットの発展と購買活動の変化に合わせ、ファネルの形も進化しています。いくつか紹介しましょう。

パーチェスファネル

もっとも基本となる「パーチェスファネル」は前出のファネルの図と同じです。
購入(=英語でPurchace)を最終的な目標として、見込み顧客の行動プロセスを以下のように図式化したものです。

モデルの一番下の層「購入」は「コンバージョン」(デジタルマーケティングの用語で「求める成果」のこと)と呼ばれ、分析したいプロセスに応じて自由に設定できます。

<コンバージョン設定の例>

・サービスの契約
・ユーザー登録
・イベントへの参加 など

パーチェスモデルは1920年代に提唱された消費行動モデルを元にしており、多様化した現代の消費行動に対応できるのか?という批判的な意見もあります。

そこで、下記のような進化系のファネルが登場します。

ダブルファネル・インフルエンスファネル

  • 「インフルエンスファネル」・・・購入後の顧客の望ましい行動
  • 「ダブルファネル」・・・パーチェスファネルとインフルエンスファネルを合わせたモデル

インターネットの普及によって情報が瞬時に広い範囲に伝わるようになり、人々の購買活動は大きく変わりました。消費者のクチコミやレビューがパーチェスファネル全体に大きく影響するようになったのです。

つまり商品・サービスを購入した顧客の行動は「購入」で終わらずその先があるという考え方です。

「インフルエンスファネル」は、商品・サービス購入後の顧客の望ましい行動を図に表したものです。また、この顧客の行動プロセスがパーチェスファネルに循環的に影響をおよぼすため、両ファネルを合わせたモデルが登場しました。「ダブルファネル」です。

「ダブルファネル」の目的は、顧客が購買するまでのプロセスを最適化するだけにとどまりません。購入後の顧客の満足感を高め、自らが広告塔となってマーケットに影響を与えるようになるまでを想定し、戦略を立てます。

ルーピングファネル

デジタルマーケティングの世界では、ファネルは更なる進化を遂げます。

といっても、現実に起こっている顧客の認識の変化・意思決定までのプロセスを図にしただけなので、誰にでも心当たりのあるモデルです。

ルーピングモデルが言いたいことを簡単に説明すると「顧客はパーチェスモデルが想定するように「認知」から「購買」まで一直線で不可逆な動きをするわけではないよね?」です。

ルーピングモデルによる顧客の行動の想定

「商品やサービスを知る(認知)」
 ↓    
「商品やサービスに興味、関心を持つ(興味・関心)」
 ↓
「商品やサービスを知る(認知)」調べた結果もっと良く知る
 ↓
「購入を考え始め、比較検討をする(比較・検討)」
 ↓
「商品やサービスを知る(認知)」比較・検討した結果もっと良く知る
 ↓ 
「購入、取引開始する(購入)」
 ↓
「商品やサービスを知る(認知)」使用・購入体験の結果もっと良く知る
 ↓ 
「購入、取引開始する(購入)」比較・検討をスキップする

ルーピングモデルは顧客の意思決定がファネルのプロセスを行き来(ループ)しつつ行われることを理解し、そこに至るまでのプロセス設計を行うことを提唱しています。

ファネル分析で得られるメリット

では実際に、ファネルを使った分析でどのようなメリットが得られるのでしょうか。

ファネル分析のメリット、具体的には?

ファネル分析には、①顧客の離脱ポイントがわかる、②効率的にCVRを高められるというメリットがあります。CVRとはコンバージョンレートのことで成果の達成率を指します。

ファネル分析のメリット①:顧客の離脱ポイントがわかる

ファネル分析は各プロセスでベンチマークとなる数値を取ることで、顧客がどこで離脱しているかを把握できます。

ネットショッピングを例にし、実際にパーチェスモデルに当てはめてみます。

顧客の
行動プロセス
具体的なプロセスベンチマーク数値離脱数
認知商品一覧ページを見る商品一覧ページのアクセス数100-20
興味・関心商品詳細ページを見る商品詳細ページのアクセス数80-64
比較・検討カートに商品を入れるカートに入れられた商品数16-4
購入購入する購入された数10
ネットショッピングをモデルにした パーチェスファネルのベンチマーク例

すると、
分析結果1:商品詳細を見たものの、購入意欲を持てなかった人が8割もいる
分析結果2:カートに入れたにも関わらず購入しなかった人が2割半いる
といったことが分かります。

ファネル分析のメリット②:効率的にCVRを高められる

ファネル分析が得意とするのは、ボトルネックになっているプロセスの発見です。

先程の例で言うと、明らかに分析結果1の「興味・関心」プロセスがボトルネックになっていそうだ、と言うことがわかります。

分析結果2の「カートに入れたにも関わらず購入しなかった」原因も気になりますし、そもそも「商品一覧ページのアクセス数が100しかない」のも改善したいところです。

しかし、分析結果1は離脱率を1割(10%)減らすだけで、購入数が8割もアップする計算です。まずはここから着手することで効率的に「購入」数値(CRV・コンバージョンレート)の改善が可能です。

顧客の
行動プロセス
具体的なプロセス数値離脱率改善後の離脱率改善後の数値
認知商品一覧ページを見る10020%20%100
興味・関心商品詳細ページを見る8080%70%80
比較・検討カートに商品を入れる1625%25%24
購入購入する1018
ネットショッピングをモデルにした パーチェスファネルの分析例

上記のように、ファネル分析ではボトルネックとなっているプロセスで顧客が離脱する理由を想定し、対策を取りましょう。

上記の例における改善施策例

・Webサイトの読み込みに時間がかかっていないか、スマホでの閲覧に問題がないか
・商品詳細ページは読みやすいか、魅力的か、必要な情報が載っているか
・「カートに入れる」ボタンの位置は適切か

採用マーケティングにおけるファネル分析の活用方法

採用マーケティングにおけるファネル分析の活用方法
  • ファネルごとにベンチマークとなるデータを収集する
  • ボトルネックになっているファネルを見つけ、原因を分析する
  • ファネルごとに現状分析と課題把握、改善施策を行う

ではいよいよ、ファネル分析の採用戦略での活かし方を確認します。
採用マーケティングに具体的にどう応用できるか見ていきましょう。

母集団形成から入社までを分析対象としてファネルに当てはめると、下記のようになります。

求職者の行動プロセス

「自社の存在を知る(認知)」
 ↓
「就職、転職先として自社に興味を持ってもらう(興味・関心)」
 ↓
「他社との比較や自分の希望と合うか検討する、応募する(比較・検討・応募)」
 ↓
「選考に参加する、内定後内定を承諾する、入社する(選考・内定)」

ファネルごとにベンチマークとなるデータを収集する

各プロセスを想定したら、次に各プロセスでベンチマークとなる数値をきめ、データを収集します。

採用ファネルベンチマーク数値の例
認知求人媒体や採用サイトの閲覧数など
興味・関心募集要項ページのアクセス数、イベントの参加数、採用サイトのリピーター数 など
比較・検討・応用応募者数、スカウト成功数 など
選考・内定選考中離脱率、内定承諾率、入社率 など
パーチェスファネルに採用活動プロセスを当てはめた場合のベンチマークの例

ベンチマークは最も労力をかけている媒体やメインとなっている採用ツールにしぼり、あまり細かく作り込まないのがポイントです。

ベンチマークの数値をとったら、ファネルごとに歩留まり率を計算してみると、分析しやすくなります。

ボトルネックになっているファネルを見つけ、原因を分析する

採用ファネルに歩留まりを書き出してみて、ボトルネックとなっているプロセスを特定します。優先対応するため、どんな原因が考えられるのか、求職者目線で多角的に考えてみましょう。

ファネルごとに現状分析と課題把握、改善施策を行う

ファネル分析では、一定期間おなじベンチマークを使用し、定期的に数値を確認して改善施策の有効性を判断します。PDCAプロセスを用い、課題・行動・結果の関係を紐付けておくと効果が見えやすいでしょう。

余力があれば、ボトルネック箇所以外のファネルでも現状分析と課題把握、それに対しての改善アクションを検討しましょう。

ファネル分析で見つけた採用マーケティングの課題の対処法

採用ファネル課題の対処法
認知自社の採用情報を発信するメディアを強化する
興味・関心自社の魅力を適切にアピールする
比較・検討・応用競合や応募導線など様々な要因があるため、多角的に検討する
選考・内定応募者とのミスマッチを解消する
パーチェスファネルに採用活動プロセスを当てはめた場合のベンチマークの例

ここでは、ファネルごとの課題にどういった点からアプローチすべきか考えます。

認知ファネルのベンチマーク数に課題を抱える場合

「そもそも認知してもらえない」という課題を抱える場合は、自社の採用情報を発信するメディアがうまく機能していない可能性があります。

<課題認識のためのアプローチ例>
・自社の求める求職者が居そうな媒体にリーチできているか?
・情報発信の頻度や濃さは適切か?
・どの媒体のパフォーマンスが悪いのか?
・採用サイト自体に問題はないか?(スマホ対応していない、広告で見づらいなど)
・採用サイトと求人媒体・SNSとの連携はうまくできているか?

興味・関心ファネルのベンチマーク数に課題を抱える場合

「認知されているようだが、興味・関心を持ってもらえない」という課題を抱える場合は、自社の魅力を適切(対象・手段・内容)にアピールできていない可能性があります。後で述べる「採用ペルソナ」を使ったブレストなども有効です。

<課題認識のためのアプローチ例>
・自社の求人情報や採用サイトは更新されているか、応募要項へのボタンは適切な配置か
・イベント情報の発信媒体、発信時期、発信内容は適切か
・求職者のニーズに沿ったイベント・採用サイトのコンテンツ設計になっているか

比較・検討・応募ファネルのベンチマーク数に課題を抱える場合

「興味関心をもってもらったが、応募してもらえない」という課題には様々な要因があるため、多角的に検討しましょう。ここでも「採用ペルソナ」による分析が使えます。

<課題認識のためのアプローチ例>
・求職者が検討の過程で知りたい情報が正しく発信されているか?
・求職者に刺さる(共感してもらえる)採用メッセージが発信されているか?
・自社の求人内容は採用市場にあっているか?
・自社の求人内容は競合と比べて魅力的か?
・募集要項をチェックした後、応募するまでのプロセスはわかりやすいか?

選考・内定ファネルのベンチマーク数に課題を抱える場合

「応募してもらったが、入社に結びつかない」という課題では、応募者と採用ポジションでのミスマッチが起きている可能性があります。また、プロセス自体の課題も考えます。ここでも「求職者目線」で課題にアプローチしましょう。

<課題認識のためのアプローチ例>
・自社や採用ポジションを正しく理解するための情報発信ができているか?
・応募時または選考過程で自社理解がさらに深まる仕組みになっているか?
・応募以降の採用プロセスのスピード感は適切か?
・採用プロセス自体に現代の採用市場に即して改善すべき点はないか?

採用マーケティングでファネル分析を実践するポイント

求職者の行動プロセス
  • ペルソナと組み合わせて分析する
  • 分析は1度ではなく、繰り返す

ファネル分析は「ペルソナ設計」とのダブル使いが効果的

各ファネルでの課題把握と改善施策の立案に有効なのが、「求職者目線」つまり「採用ペルソナ」です。※採用ペルソナとは「自社が採用したい人物像に細部まで肉付けしたもの」です。

例として「興味・関心」から「応募」に至る歩留まりに課題を抱える場合を考えてみましょう。

ファネル分析とペルソナ分析のダブル使いの例

①「採用ペルソナの◯◯さんが自社に興味を持ってくれたのに、応募に至らなかったのはどうしてだろう?」と考えます。

②ペルソナシートなどを見返すと「◯◯さんが転職活動で大事にしたいこと」の一つに、ワークライフバランス(WLB)の充実と書いてありました。

③すると、チェックポイントとして、下記が挙げられます。
・自社のWLBについての情報は十分に公開されているか、見やすいか
・自社のWLBは競合他社と比べて魅力的か・競争力があるか
・自社のWLBについてのリアルな情報(コンテンツ)が発信できているか

④チェックの結果、WLBの情報が十分に打ち出せていないことがわかりました。

⑤今月の施策として、WLBのリアルな情報を発信するため、実際の社員の1日を追いかけたコンテンツを企画・発信することにします。運営しているSNSでも公開し、求人媒体の文章も自社のWLB施策について追記します。

⑥「興味・関心」から「応募」に至る歩留まりの改善具合を確認します。

時間がない採用担当者に勧めたい!ファネル分析の魅力

1つの改善施策だけで、ファネルの歩留まりの劇的な効果は得られないかもしれません。

しかし、ファネル分析を繰り返すことで、採用プロセスが軸をぶらさずに改善されてゆくイメージをつかんでもらえたのではないでしょうか。

現状の採用プロセスについて2ヶ月に一度ファネル分析を行ない、ボトルネック箇所への改善施策を行う。これだけで、年6回も重要な改善を行うことになります。採用課題が解決するかもしれません。

また、ファネル分析は採用プロセスを図式化するため、採用活動に不慣れな人にも理解してもらいやすいフレームワークです。一度ベンチマークまで設定してしまえば、課題発見から改善施策までを他の人と協力して行うことも可能です。

忙しい採用担当者の方はぜひ活用してみてください。

まとめ:ファネル分析の活用で採用プロセスの精度を上げる

採用マーケティングの手法のひとつ「ファネル分析」について紹介しました。

プロセスの中で、ボトルネックになっている箇所のあぶり出しに効果を持つファネル分析。
その部分の改善を図り、効果検証を続けることで、採用プロセスの精度を上げることができます。

もし自社のボトルネック部分が「認知」や「興味・関心」の母集団形成である場合には、採用マーケティングの方法論を用いた様々な外部サービスの活用も検討できます。

採用サイトの制作、Web集客、求人検索エンジンの活用など、どれも一から自社で対応するにはノウハウが必要です。専門家による最新の知見を用いることで、効率よくボトルネックの解消・プロセス改善を実現しましょう。

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この記事を書いた人

人材業界|求人サイト運営・運用・管理
広告運用歴4年
ベンチャー企業でプレイングマネージャー
求人アグリゲーションサイトのことからベンチャー企業のあれやこれやも発信します。
indeed/求人ボックス/stanby/Google広告/seo

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