採用にマーケティングの手法をとりいれる採用マーケティングは具体的にどのように進めればよいのでしょうか。
その手法と、採用マーケティングを会社に依頼するメリットについてまとめて掲載しています。
「採用マーケティングについて」詳しい解説はこちらです。
そもそも採用マーケティングとは?
採用マーケティングとは、採用活動にマーケティングの考え方や手法を取り入れることです。
マーケティングとは企業などの組織が顧客が求める商品やサービスをつくり、その情報やサービスを最善の方法で顧客に届け、顧客がその価値を効果的に得られるようにするための行動や概念です。
マーケティングと言うと、従来は会社から顧客に対して行われていましたが、採用の際にも求職者に対しても求職者をターゲットとし、マーケティングを意識した人材採用が行われるようになってきており、採用マーケティングという概念が浸透してきています。
採用マーケティングの手法で多くの悩みは解決できる
採用に悩みを抱える企業は多いかと思います。
- 応募が来ない
- 採用が決まってもすぐ辞めてしまう
- 欲しい人材と応募してくる人材が異なる
- 採用単価が高い
などはよく耳にする採用の悩みです。どの企業も採用には悩みがつきません。応募者の拡大にはマーケティングの手法が有効です。
その他、採用の悩みを解決するのに採用マーケティングの手法を導入することで、悩みの解決に繋がるかもしれません。
採用マーケティングの手法一覧
では具体的にどう採用マーケティングを進めていくのか。マーケティングで使われる用語と手法を例にとり、採用に置き換えるとどのように考えられるのか、進められるのか採用マーケティングの手法をみていきます。
<採用マーケティングの手法一覧>
採用マーケティング手法 | 説明 |
---|---|
ペルソナ | 採用したい人人物像のこと。ペルソナを設定することで採用活動の方向性が決まる。 |
採用ブランディング | 採用において自社をブランド化すること。「ここで働きたい!」という人材が増える。 |
カスタマージャーニー | 求職者が自社を認知してから採用に至るまでの経緯。各プロセスの役割が明確になる。 |
エンゲージメント | 求職者とのつながりを高め、特定のファンを作る手法。SNSの普及で活発化している。 |
3C分析 | customer(顧客・市場)、competitor(競合)、company(自社)を分析。環境分析の手法。 |
5A理論 | 求職者の意思決定の流れにおいて、それぞれにふさわしいマーケティングをする手法。 |
SWOT分析 | strength(強み)、weakness(弱み)、opportunity(機会)、threat(脅威)の4つを分析。 外部環境と内部環境の両方を把握できる。 |
タレントプール | 人材候補のタレント(才能)に継続的に接触し、人材情報をプールする(蓄える)手法。 |
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採用マーケティングの手法①ペルソナ
マーケティングにおいて、ターゲットの選定は欠かせない作業です。採用でもどのような人材を採用したいのか、どんな人に応募してきて欲しいのか明確に描く事で手法も変わってきます。
ペルソナは具体的に、詳細に人物像を設定します。上記の例以外にも、例えば以下のような感じです。
<A社のペルソナ>
- 25歳
- 男性
- 都内在住
- 独身
- 〇〇大学卒業
- 現在の給与は〇円
- 〇〇の資格を持っている、勉強している
こんな風にペルソナを作っていくことで、どんな人材の採用したいという理想を描いているのかが見えやすくなります。ペルソナ選定はマーケティングでは大切な工程で、採用マーケティングを進めるうえでも取り入れたい手法です。
<こんな場面におすすめ>
- 採用戦略の立案時
- 人材のミスマッチが起きている時
- 応募の質が良くない時
採用マーケティングの手法②採用ブランディング
商品やサービスをブランドを顧客にとって価値あるものに仕立て、マーケットで自社商品やサービスのポジションを確立するのがブランディングです。商品やサービスを他商品と区別できる個性を明確にします。ブランディングはマーケティングの中では、商品やサービスを他商品と区別できる個性としてブランドの作成を目指します。
例えば、高級チョコレートのブランディングでしたら、商品デザインやロゴマーク、メッセージ、広告・プロモーションなどは安価なチョコレートと大きく変わってきます。
採用ブランディングでは商品ではなく、会社、つまり「自社」をブランド化します。ブランディングのターゲットとなるのは顧客や購買者ではなく、企業への応募者、求職者です。
ブランディングは、人材採用費用の削減や採用精度を向上といった目的の他、他社競合との差別化をするのにも有効です。描いているペルソナに合わせてブランディング戦略を立てるのも有効です。
「どこでも良い」と応募してくる人が多かったり、採用した人がすぐ辞めてしまうことが多いなど、採用したい層と応募者の乖離が大きい場合には、採用ブランディングの強化を検討するのが有効かもしれません。
<こんな場面におすすめ>
- 人材のミスマッチが起きている時
- 内定辞退が多い時
- 採用したい層と応募者の乖離が大きい時
採用マーケティングの手法③カスタマージャーニー
カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを最終的に購入するまでのプロセスをいいます。
ペルソナの行動や思考を見える化し、どの段階で商品やサービスを認知させるか、検討させるか、購入に至るかというような設計をし、カスタマージャーニーマップを作成します。
採用の場合は、どのように欲しい人材に自社を知ってもらうのか、検討してもらうのか、応募まで誘導する事が出来るのかなど、カスタマージャーニーの考え方で設計をする事が出来そうです。
求職者の動きを見える化することで、会社と求職者との接点を洗い出したり、アプローチ方法を検討したりすることができます。
<こんな場面におすすめ>
- 採用戦略の立案時
- 求職者へのアプローチ方法を検討したい時
- 採用のボトルネックを明らかにしたい時
採用マーケティングの手法④エンゲージメント
エンゲージメントマーケティングは、顧客とのつながりや関与度を高め、特定の企業や商品に愛着を高めることで、固定ファンを作るようなマーケティングの手法です。
エンゲージメントマーケティングは、マスに訴えるのではなく、特定のファンを作る手法でSNSの普及により活発化されてきていている印象です。
採用のエンゲージメントマーケティングでは、企業に対して信頼感と愛着を持つ層の採用ということになります。独自の会社説明会を実施する企業もありますし、エンゲージメントを高めるため積極的にインターン制度を実施している企業もあります。
採用においては、エンゲージメントがうまく行くと離職者を減らせる可能性も高まりますので、有効なマーケティング手法となりそうです。
<こんな場面におすすめ>
- 離職率が高い時
- 自社の理念に共感した人を集めたい時
採用マーケティングの手法⑤3C分析
3C分析とは、マーケティングにおける環境分析のフレームワークです。自社の周辺環境を分析する際に用いられ、「customer(顧客・市場)、competitor(競合)、company(自社)」の3つのCから3C分析と呼ばれます。
採用マーケティングにおいては「求職者のニーズの変化を分析し、競合他社の戦略を把握し、それらを踏まえた上で自社が成功できるように自社の強み・弱みを分析する」と置き換えて分析することで、採用市場の中での自社の立ち位置を把握でき、採用活動の方向性が見えくるでしょう。
<こんな場面におすすめ>
- 環境分析をする時
- 競合他社にとの差別化を図りたい時
採用マーケティングの手法⑥5A理論
<こんな場面におすすめ>
- 採用プロセスを元に効果的なアプローチを考える時
- 求職者の視点から採用プロセスを整備する時
採用マーケティングの手法⑦SWOT分析
プラス要因 | マイナス要因 | |
---|---|---|
内部環境 | strength (強み) | weakness (弱み) |
外部環境 | opportunity (機会) | threat (脅威) |
strength(強み)とweakness(弱み)は内部要因、opportunity(機会)とthreat(脅威)は外部要因として、これらを掛け合わせることで内部と外部双方から戦略の立案ができます。
マーケティングだけにとどまらず、経営や自己分析などにも使われる万能なフレームワークです。
<こんな場面におすすめ>
- 自社の強みや弱みを明らかにしたい時
- 求職者に訴求するべき強みや弱みを明らかにしたい時
採用マーケティングの手法⑧タレントプール
タレントプールとは、自社の人材候補となり得る有望なタレント(才能)に継続的にコンタクトを取り続け、人材の情報をプールする(蓄える)仕組みのことです。
必要な時に必要な人材とコンタクトを取れるように人材データベースを準備しておくことで、自社にマッチする人材を広告料や紹介料なしで採用まで運ぶことができます。就職潜在層に向けた有効なアプローチ方法として、近年注目されています。
<こんな場面におすすめ>
- 必要な時に必要な人材にコンタクトを取れるようにしたい
- 転職潜在層にアプローチしたい
- 採用コストや工数を削減したい
デジタルマーケティングの知識も採用手法に有効
これまで紹介したマーケティング用語を見て、ペルソナ?エンゲージメント?となった人も居るかもしれません。マーケティングでは基本知識ですが、採用現場ではあまり意識されてこなかった考え方かもしれませんね。
採用向けのホームページを運用する場合は、これらの知識を念頭に置いた上で、ホームページに関するマーケティングを進めるにはさらに応募を獲得するために採用サイト、ホームページの運用におけるデジタルマーケティングの知識も有効となってきます。
採用ホームページを作ったのに応募が来ないなどの悩みを解決するために有効です。
デジタルマーケティングの手法①独自ドメイン
ドメインとは、インターネット上の住所のようなものです。ドメインを決めることは会社の名称を決めるのと同じくらいとても重要な工程になっています。
独自ドメインの取得は、先に紹介した「ブランディング」に有効な場合も多いです。
デジタルマーケティングの手法②SEO
SEO(検索エンジン最適化)とは、検索結果で上位に表示させるための施策のことです。SEOはホームページを運用したり、デジタルマーケティングを行うものには基本的なワードです。
SEOを行う上では、内部対策や外部対策、アルゴリズムやオーガニック検索など、これこそ普段人材担当者は耳にしない言葉が多いかと思います。
ホームページは作っただけで見られる訳ではありません。SEO対策を有効に実施し、検索エンジンの上位表示させることは、ホームページへの来訪者を増やし、応募者を増やすために効果があります。
デジタルマーケティングの手法③コンバージョン
デジタルマーケティングではゴールに導く事をコンバージョンといいます。
企業が顧客に対し行うマーケティングの場合、コンバージョンは資料請求・商品購入などとなります。採用の場合は、求人応募、エントリーなどになります。
コンバージョン率を数値化することで、改善点が見やすくなります。
デジタルマーケティングの手法④トラッキング
トラッキングとは、インターネット上のユーザー行動を追跡・記録することをいいます。サイト内のトラッキングのデータを分析する事で、先に書いたコンバージョン数や率を見る事が出来、より効果的にホームページを作り替えたり、誘導を見直すなどすることができます。
・どこからどのくらい人が来たか
インターネット広告なのか検索エンジンなのか、昨年と比べて増えているのか減っているのかなど
・どのようなページを見ているのか
製品紹介・事例など、どんなページやコンテンツが良く見られているかを見る事が出来ます。採用の場合は企業情報なのか、福利厚生なのか求職者がより求めているコンテンツを見る事が出来ます。採用ホームページのコンテンツの中でどのページが良く見られているのか知ることで、そのコンテンツをより厚くするなどの対策を取ることが出来ます。
効果の出る採用ホームページには求職者が見たいコンテンツがあります。以下、10項目が企業が採用活動で提供する情報と学生が就職活動で知ることができた情報の乖離が大きかった項目です。
- 社内研修・自己啓発支援の有無とその内容(業務研修・語学研修など)
- 自社が求めている具体的な能力・人物像
- 転勤の有無
- 具体的な仕事内容
- 取り扱っている製品やサービス
- 初任給
- 勤務地
- 過去3年の新卒採用実績数
- 応募条件
- 社風・企業文化
参照)就職みらい研究所 – リクルートキャリア 就職白書2021
トラッキングのデータや、このような情報を生かすことで、自社の採用ホームページに適切なコンテンツとする事が出来ます。
・コンバージョンに結びついているか
せっかく多くホームページを見られていても、求人応募やエントリーが少ない場合もあるかもしれません。お問合せフォームのページで離脱してしまっているのか、そもそも応募フォームまでたどり着いていないのかコンバージョンの課題が見えやすくなります。
このように、ホームページ閲覧者の行動をトラッキングすることで、改善点が見えやすくなります。
SEOの効果があり検索エンジン経由の流入が多いのか、ネット上に掲載した広告の効果を確認するほか、どの経路でコンバージョンに至ったかなどを確認することができます。仮にコンバージョンに至らなくても、どこに問題があったかなどの分析もでき、消費行動を把握できるので、デジタルマーケマーケティング戦略構築に重要な指標となります。
デジタルマーケティングの手法⑤リスティング広告
リスティング広告は、入力した検索キーワードに連動して、検索結果上に表示される広告です。
関心が高いワードに広告が表示されるため、高い効果を期待できる広告といわれています。「Google アドワーズ」や「Yahoo!プロモーション広告」などが代表的なリスティング広告です。
クリックしてはじめて課金される、クリック課金方式が採用されており、予算に応じての露出が可能です。どのようなキーワードを選定するのか、どのキーワードにいくら予算を割くのか検討するところが色々とあります。
デジタルマーケティングの手法⑥CPA
CPAはCost Per Acquisition/Actionの略で、コンバージョンに対して発生した費用のことです。
CPAが低ければ、それだけ費用対効果が高いということになります。Web広告の効果測定など、デジタルマーケティングではCPAを測定するのは基本的なことですが、採用の場合は1人の採用にあたりにどの費用がかかっているのか把握していない企業も多いようです。
このように採用の場面で必要なマーケティングの知識と、ホームページを効果的に運営する際のデジタルマーケティングには色々な用語と手法があります。
マーケティングやデジタルマーケティング担当者にとってはマーケティングの基本知識ですが、人事担当の方には知らない手法もあったかもしれません。このようなマーケティング手法を採用に流用することで効果的に採用を進めることが出来るようになるでしょう。
採用マーケティングの手法を取り入れた4つの成功事例
ここでは、採用マーケティングを実際に取り入れている企業の成功事例を紹介していきます。
ターゲット分析や自社の分析で採用ブランディングを確立し、認知度や価値の向上を図った4つの事例を紹介します。
売り手市場の現状で「選ばれる企業」になるために戦略的な情報発信でブランディングをしている企業は少なくありません。
採用マーケティングの成功事例①講談社の事例
講談社は採用のホームページで、「とんがり人間」を募集していることが明記されています。
一般的に、カッコよく洗練された採用サイトが多い中、講談社はカラフルで楽しい採用ホームページで差別化を図るブランディングをしています。
2020年の採用サイトキャッチコピーは「開拓者、求む」です。先輩の声を載せる採用サイトは多いですが、講談社は「とんがり人間」として紹介しており、開拓者マインドのある、どんがった人間を採用したいというブランディングを強く感じます。
講談社の採用ホームページ:https://recruit.kodansha.co.jp/2022/
採用マーケティングの成功事例②ADKの事例
ADKは、「スタメン採用」というブランディングをしている企業です。
エントリーの際「個性」を選び提出、その個性をいかした「野望」を提出するなど、ユニークな応募を進めています。自分の個性を分析でき、野望を描ける人しか応募ができません。
なんとなくどこでも良い……という人は応募できないようになっています。
ADKの採用ホームページ:https://recruit.adk.jp/
採用マーケティングの成功事例③三幸製菓の事例
採用ブランドの成功事例として、語られることの多い三幸製菓。「雪の宿」や「ぱりんこ」などのヒット商品があるものの、新潟勤務ということで応募者が敬遠してしまうことがあったそうです。
その点を逆手に取り「新潟が好き」「せんべいが好き」こういった層を採用できるようなブランディングとしました。
もし、ただ大手求人サイトに三幸製菓の求人募集として掲載していたのでは埋もれていたかもしれませんが、「新潟」「せんべい」という企業の特色を全面に出すことで企業に合う層の採用を進める事に成功したのです。
三幸製菓の採用ホームページ:https://www.sanko-seika.co.jp/recruit/
採用マーケティングの成功事例④GYAOの事例
GYAOは2017年卒より「新卒採用アプリ」を導入し、従来あったWEBサイトからのエントリー自体を停止しています。目的は、自社が求める人材とのギャップを埋めるためでした。
GYAOが欲しい人材はITリテラシーが高い層に対し、リテラシーの低い層も応募が来てしまう、そのため応募方法を「アプリ」のみにすることで、少なくともアプリをダウンロードしたり、操作するのが問題ない層しか応募してこないという訳です。
応募経路をアプリのみに制限することで、エントリー数は大幅に減ったそうですが、採用効率はあがったということ。
「応募者」を募るのではなく「採用すべき人材の応募」を促すという思い切った施策ですね。求める人材と応募してくる人材を近づけ、採用効率を上げることができます。
必ずしも応募者を増やすだけが採用ブランディングではありません。これも1つの成功している採用ブランディングの形です。
GYAOの採用ホームページ:https://www.gyao.co.jp/jp/hr/
採用マーケティングの手法を取り入れる難しさ
採用マーケティングの重要性や、必要性、そして手法を理解したものの、いざ実際に社内で採用マーケティングを進めようとすると難しさを感じるかもしれません。
各会社にマーケティングの部署があり、マーケティングの手法があるようにマーケティングは専門の部署が対応するのが一般的です。これらを人事担当が合わせて行うというのは不安も大きくなる可能性が高いです。
採用マーケティングの壁①適任の担当者がいない
人事担当の者が進める場合は、まずマーケティングについて学ぶ必要があります。
ここで紹介したマーケティング用語はマーケティングの基礎知識です。
この知識がある上で、どう採用を進めていくかと検討できる人材が適任ですが、なかなか人事担当でこれらのマーケティングの知識があり、それを実施できる人材は少ないかもしれません。
採用マーケティングの壁②採用担当の負担増
実施できる人材がいたとしても、担当者の負担が増加することは否めません。
単に「応募者を増やす」「求職者を獲得する」というゴールへ向けて、これら採用マーケティングをしっかり実施していこうと思うと、それなりの工数もかかり採用担当の負担が増えてしまうでしょう。
採用担当の負担を軽減して効率的に採用マーケティングを進めるためには、外注化も視野に入れるのがおすすめです。