日本国内の少子高齢化が進んでいることに伴い、海外展開を進める企業が増えています。
しかし、海外市場で対応できるグローバルな人材の採用や育成が難しく、課題に感じている企業の数は年々増えています。
グローバルな人材とは、海外のビジネスに対応し成果を出せる人材のことです。
近年は人材の育成にむけて、海外文化の理解とコミュニケーション能力を高め、ビジネスで通用するような語学力を持つ人材を確保し、自社で育成を行うケースも増えています。
グローバル人材とは?
グローバル人材とはどのような人物でしょうか。文部科学省や総務省、人材育成推進会議が定義している内容は、次の通りです。
文部科学省におけるグローバル人材の定義
文部科学省では2011年に行われた「グローバル人材育成推進会議」において、グローバル人材の定義を以下のように定義しています。
○ 「グローバル人材」の概念を整理すると、概ね、以下のような要素。
要素Ⅰ: 語学力・コミュニケーション能力
要素Ⅱ: 主体性・積極性、チャレンジ精神、協調性・柔軟性、責任感・使命感
要素Ⅲ: 異文化に対する理解と日本人としてのアイデンティティー
○ このほか、幅広い教養と深い専門性、課題発見・解決能力、チームワークと(異質な者の集団をまとめる)リーダーシップ、公共性・倫理観、メディア・リテラシー等。
○ グローバル人材の能力水準の目安を(初歩から上級まで)段階別に示すと、
① 海外旅行会話レベル
② 日常生活会話レベル
③ 業務上の文書・会話レベル
④ 二者間折衝・交渉レベル
⑤ 多数者間折衝・交渉レベル
この中で、①②③レベルのグローバル人材の裾野の拡大については着実に進捗。今後は更に、④⑤レベルの人材が継続的に育成され、一定数の「人材層」とし て確保されることが極めて重要。
(出典)「グローバル人材育成推進会議中間まとめ」(2011年6月) グローバル人材育成推進会議3
資料2 「グローバル人材の育成について」文部科学省
総務省におけるグローバル人材の定義
総務省におけるグローバル人材の定義は、平成29年7月14日に公表された「グローバル人材育成の推進に関する政策評価」の結果に基づく勧告(概要)において、定義付けされています。
「グローバル人材」とは、第2期計画において、日本人としてのアイデンティティや 日本の文化に対する深い理解を前提として、ⅰ)豊かな語学力・コミュニケーション能 力、ⅱ)主体性・積極性、ⅲ)異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材のこと。
グローバル人材の推進に関する政策評価書 p13(総務省)
人材育成推進会議におけるグローバル人材の定義
平成23年に行われたグローバル人材育成推進会議は、議長が指名する文部科学副大臣及び内閣総理大臣補佐官が座長を務めています。
構成員は内閣府、外務省、厚生労働省、経済産業省の副大臣又は大臣政務官にて行われた会議です。
その会議ではグローバル人材は次のように定義付けしています。
○ グローバル人材の概念に包含される要素の幅広さを考えると、本来、その資質・能力は単一の尺度では測り難い。
しかし、測定が比較的に容易な 要素Ⅰ(「道具」としての語学力・コミュニケーション能力)を基軸として(他 の要素等の「内実」もこれに伴うものを期待しつつ)、グローバル人材の能 力水準の目安を(初歩から上級まで)段階別に示すと、例えば、以下のような ものが考えられる。
① 海外旅行会話レベル
② 日常生活会話レベル
③ 業務上の文書・会話レベル
④ 二者間折衝・交渉レベル
⑤ 多数者間折衝・交渉レベル
○ 我が国では、①②③レベルのグローバル人材の裾野の拡大については着実に進捗しつつあるものと考えられる。今後は更に、④⑤レベルの人材が 継続的に育成され、一定数の「人材層」として確保されることが、国際社 会における今後の我が国の経済・社会の発展にとって極めて重要となる。
引用:グローバル人材育成推進会議 審議まとめ(首相官邸)
政府が定めるグローバル人材とは、語学が堪能というだけではなく、日本人としての考えをしっかり持っていることが重要です。
また、相手の立場になって意見を伝えることや、外国人の人々ともお互いが協力できる姿勢を持つ人材のことをグローバル人材と位置づけしています。
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なぜグローバル人材が必要とされるのか?
では、ここからはグローバル人材がなぜ今日本で必要とされているのかを解説していきます。
- 日本のグローバル人材が少ない
- 少子高齢化での日本の生産人口の減少
- 新型コロナウイルスの影響
日本のグローバル人材が少ない
1つ目の理由は、現在の日本にグローバル人材が少なすぎることです。
WEF(世界経済フォーラム)の世界競争力報告資料をもとにした国際競争力ランキングで日本は9位となっており、高校生・大学生の日本人留学生については「世界で30位以下」です。
少子高齢化だけでなく、若い世代の国際的な意識の低さも露呈しています。
そのため短期的にも長期的にもグローバル人材が育たず、日本国内での供給が減少しています。
少子高齢化での日本の生産人口の減少
2つ目の理由は少子高齢化での日本の生産人口の減少です。
現在の日本では子供の出生率が低く、高齢者の割合が高くなる「少子高齢化」が大きな問題となっています。
下記の図を見ての通り、今後の若手人材の確保は難しくなると予想されるため、外国人労働者の活用や外国企業とのやり取りを行う日本企業が多くなる可能性が高いです。
そのため、さらにグローバル人材の需要が高まり、供給が追い付かない状況が予想されます。
新型コロナウイルスの影響
3つ目は新型コロナウイルスの影響です。
新型コロナウイルスの影響で働く環境や働き方が変わりました。
直接的なミーティングや訪問がなくなり、オンラインがメインの仕事のやり方に変わりました。
それによって物理的な距離での制約がなくなり、海外とでも容易に仕事ができるようになりました。
そのため、海外の企業と交流ができる人材が大きな価値になります。
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グローバル人材になるために必要なビジネススキル
グローバル人材になるための必要なスキルとして5つを紹介していきます。
- 言語力
- 主体性
- 文化や伝統の理解
- リーダーシップ
- 海外のビジネスマナー
言語力
グローバル人材として海外で活躍するためには、日本語以外の言語を理解する力が欠かせません。
母国語以外の言語を聞き取り、相手の話をしっかりと聞きながら自分の伝えたい内容を的確に説明できる能力が求められます。現地スタッフと上手にコミュニケーションができれば、活躍の道は広がるでしょう。
主体性
グローバル人材に必要な能力として主体性も求められます。
海外で仕事をするうえで、予期せぬトラブルに見舞われる可能性もゼロとはいえません。
ときには自分で責任を負いながら主体性をもって判断して課題解決に導く人は、グローバル人材として求められる人物といえます。
文化や伝統の理解
海外で仕事をするには、海外の文化や伝統を理解した上で対話や商談を行う必要があります。
海外で仕事をする際、外国の方からは日本の文化や伝統について質問される機会もあります。海外の文化や伝統を理解した上で、自社商品やサービスを伝えていくことが大切です。
リーダーシップ
日本企業が海外でグローバル展開すると、国内とは異なるリスクや困難に直面することもあります。
海外で発生した課題や困難を乗り越えてプロジェクトを成功させるには、責任感やリーダーシップスキルが必要です。
グローバル人材として活躍するには、リーダーシップを発揮し、プロジェクト全体の状態を把握して、効率的かつきめ細やかに物事を進めていくことが重要です。
特に、海外を拠点としたプロジェクトでは、チームワークが重視される場合があります。
リーダーシップスキルがあれば、チーム内のメンバーと意識をともにして、一人ひとりの能力を引き出しながらプロジェクトを進行することが可能です。
海外のビジネスマナー
日本国内でも海外でも、社会人としてビジネスマナーを守ることは不可欠です。
ただし、ビジネスマナーは世界各国の国や地域によって大きな違いがあります。
商談の際、日本で最初に行う動作は名刺交換ですが、アメリカだと先に握手するのがビジネスマナーとなり対応が異なります。
グローバル人材として海外で活躍するには、世界各国のビジネスマナーを習得・精通しているかが重要です。
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グローバル人材を採用するには?
グローバル人材になりうる優秀な人材を採用するには、一体どのような方法があるでしょうか。
現在は新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、ここ1〜2年は留学を経験している人は減少している状況です。
出典:「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について 文部科学省 | 令和4年3月30日報道発表資料 | 詳細はこちらから
留学経験のある学生を新卒で採用したいと考えても、母数が少ないため競争率は激化しています。グローバル人材の採用を可能にするために、事前にチェックできるポイントを紹介します。
- 自国以外の文化を受け入れられるかを見極める
- グローバルコミュニケーションができるかを見極める
自国以外の文化を受け入れられるかを見極める
通常の採用(中途採用)の場合、個人のスキルやどのような人物かの見極めが重要な要素となります。
グローバル採用の場合は、個人のスキルや人物像も大切ですが、海外の文化に対する柔軟な考えや捉え方ができるのかも大事なポイントです。
文化だけでなく価値観も違いがあるため、自国以外の異なる文化に対して柔軟性があるかの見極めは大切です。
日本国内で外国籍の人をグローバル人材として採用する際にも同じポイントを意識すると、入社後早い段階で組織や環境に馴染むことができます。
グローバルコミュニケーションができるかを見極める
コミュニケーション力というと言語能力と捉えますが、ボディランゲージも使った非言語の交渉術の能力も欠かせません。
伝えたいことを、言語や文化・価値観が違う人を相手にしても的確に伝えられる力が問われます。
言語力についても当然、ビジネス会話レベルが求められます。グローバルなコミュニケーション力があるかも採用前にチェックするポイントです。
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グローバル人材の育成方法
留学する人が減少している状況で、グローバル人材を育成するにはどのような方法があるでしょうか。
- 外部セミナーを利用する
- 社員が情報をアウトプットしやすい環境を作る
- eラーニングを活用する
グローバル人材の育成方法①外部セミナーを利用する
グローバル人材を育成するために社内で教育プログラムを作成するのも重要ですが、スキルを身につけるには外部セミナーを利用するのもおすすめです。
外部セミナーを利用するのであれば、社内教育より費用はかさみますが、グローバルなビジネスシーンを熟知しているプロフェッショナルが揃っています。セミナーで得た知識を社内に蓄積できれば、そこから社内でグローバル人材の育成も可能になります。
グローバル人材の育成方法②社員が情報をアウトプットしやすい環境を作る
グローバル人材として世界で活躍するには、主体性や積極性が必要です。
しかし会議やプレゼンテーションの場で、自ら率先して発言できない人は少ないでしょう。
社員の積極性や主体性を高めて成長してもらうには、質問したり社内発表会をしたりして、少しずつアウトプットしやすい環境をつくることも大事です。
グローバル人材の育成方法③eラーニングを活用する
eラーニングは、インターネット回線を利用したネット上での学習スタイルです。インターネット回線さえ繋がっていれば、時間や場所にとらわれずに学習できるのが特徴です。
特にコロナ渦の現在、大きく市場規模を伸ばしている学習方法です。
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まとめ:グローバル人材の育成方法と採用方法を理解する
現在はグローバル化が加速しており、海外に事業展開する日本企業も増えてきました。しかし、留学経験のある人も年々減少しており、語学力のある人を探すのは難しい状況となっています。
なお、グローバル人材が近年でも重要視されていることが下記の記事でも紹介されています。
社長になるのに必要な「スキル」が新社長24人分析で判明!
さらに、グローバル人材として求めるスキルは、語学力だけでなく、コミュニケーション能力や主体性・積極性など数多くのスキルを求められます。すでに勤務している社員の中からグローバル人材を育成することも、海外展開をしている企業の方は考えているのではないでしょうか。
社内でグローバル人材を育成するには、独自の育成プログラムを作成するのも大事ですが、専門的な知識を有する外部セミナーやeラ―ニングを効果的に活用し、グローバル人材の育成に力を入れていきましょう。
今後さらにグローバル人材の採用は難しくなっていくことが予想されますので、社内でグローバル人材を育成できる環境を整えて、グローバル人材を育成していきましょう。