「退職したい」と相談された際の対応は上司・先輩としての手腕が問われます。
今までの対応が悪かったのか?労働環境に不満があったのか?部下の退職の理由を瞬時に理解して、その理由にあった対応をしなくてないけません。
その際に正しい対応を行うには、経験と知識が不可欠です。ですが、退職を相談された経験がある人は少ないでしょう。
この記事ではそういった人が正しく対応できるように、退職理由ごとの対応を紹介します。
「退職したい」と相談されたときの上司・先輩の悪い対応
部下や後輩から退職したいと相談されたときに、どういった対応をするかは上司・先輩のマネジメント能力が問われます。
退職時の対応は既存の社員にも大きな影響を与えますので、細心の注意を払いましょう。
「退職したい」と相談されたときのダメな対応を3つ紹介します。
- 「あとでいい?」と退職の相談を先伸ばしにする
- 他の上司・先輩も呼ぶ
- 部下の人格を否定する
「あとでいい?」と退職の相談を先伸ばしにする
まず1つ目が、退職の相談を先延ばしにすることです。
相談をする人は上司・先輩であるあなたの機嫌や仕事の隙間を見て相談しに来ます。
その際に「あとでいい?」や「ちょっと待ってて!」など、雑に先延ばしにされると不満や不安を感じてしまいます。
退職の相談をするときは以前から辞める気配があったり、声を掛けられるタイミングでなんとなく分かるはずです。
退職の相談に関わらず、暗い顔で声を掛けてきたときは時間を置かずにすぐに対応してあげましょう。
他の上司・先輩も呼ぶ
2つ目は、自分以外の社員が退職の相談を聞くことです。
相談したい社員は、まだ退職することが決定ではないので話をおおやけにしたくありません。
なので相談はできるだけ他の人がいない場所や会議室で行うようにしましょう。
また上司としても退職する時の本音を聞くことができれば、今後のマネジメント業務に活かせます。
部下の人格を否定する
3つ目は、退職の原因を相手の人格のせいにすることです。
退職の理由は様々ですが、個人が全面的に悪いなどということは決してありません。
人格を否定する人は、その人の人格を退職の原因にすることで「自分は悪くない」と責任逃れをしたいのです。これは完全に間違った他責思考です。
何が原因であれ自分の部下が退職することは紛れもない事実であり、その原因の一端は確実に自分にあります。
その本当の原因を確かめもせずに自分の責任を逃れようとすることは、ハッキリ言ってマネジメント以前の問題であり上司失格です。
部下の退職の本当の相談理由
ここまで上司のダメな対応を解説しました。では、なぜ部下は退職という選択をしたのか?
上司には直接は言いにくい本音の部分を紹介します。
リクナビNEXTが調査した「転職理由と退職理由の本音ランキングBest10」を参考に上位3位を解説します。
3位.同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった
退職理由の本音ランキングの3位は、会社内の人間関係のストレスからくる悩みです。
どの会社でも人間関係の問題で退職する人は多いですが、およそ1割弱の人が退職の理由になっているので、すぐにでも対応するべきでしょう。
特に女性社員同士の人間関係のもつれが多く、プライベートの部分が多いので対応が難しいです。
ですが、業務以外でストレスを感じることは会社の運営上で大きな問題となりますので、すぐに対応が必要です。
2位.労働時間・環境が不満だった
退職理由の本音ランキングの2位である「労働時間・環境が不満」は上司や先輩というよりは会社や経営者の問題でしょう。
この理由で退職する人は特に技術者の割合が高く、言いたいことを言えずに溜め込んでしまう人が多いです。
1位.上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった
退職理由の本音ランキングの1位は「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」です。
この結果に驚く人も多いのではないでしょうか?
部下や後輩は基本的に上司や先輩に自分の意見をハッキリいうことはできません。
それは下手をすれば「反抗」と捉えかねられないからです。
自身の上長には出来るだけ良い印象をもって欲しいので、このような考え方や言動が常習化してしまい、結果として長期間のストレスが発生してしまいます。
- 退職理由で多い理由はなに?
-
退職理由ランキングによると、「1位.上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」「2位.労働時間・環境が不満だった」「3位.同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった」でした。1位と3位が人間関係であることから、比較的人間関係に悩んで辞めていく人が多いと言えます。
退職の相談と理由ごとの上司の対応
では、上記の問題にどう対応すれば良いのかを解説します。
指揮系統・部署の移動(同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった)
同僚・先輩・後輩とうまくいかない人は、今後も引き続き上手くいかないことが予想されます。
なぜなら一度関係が悪化した人間関係を改善することは大変難しく、仕事上の関係であればなおさらです。さらにそこに再現性はありません。
つまり、この問題の解決策は後手ではありますが、部署の移動や役職の変更などで随時対応するしかありません。
もし部署移動を行っても再度問題が起きるようなら、会社ではなく個人に問題があるのかもしれませんので、人間関係の調整は慎重に行いましょう。
業務効率の向上(労働時間・環境が不満だった)
労働環境が悪いことは会社全体で対応しなければならない重要な問題です。
一個人が解決できるものではないので、上層部で解決策の検討をしながら改善していきましょう。
具体的には、
- 労働条件を変更する
- 業務効率を向上させるツールの導入
- 人員を増やす
- 福利厚生を充実させる
などです。
この理由で退職したいと考える人は、やる気があるが体力的に追いつかないという状況なので、環境によっては高い能力を発揮します。優秀な人材が退職する前にすぐに対応しましょう。
会社の体制を改める(上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった)
退職理由の1番の理由である「上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった」の解決策は、会社の体制を改める以外ありません。
上司の仕事が効率的ではないことや、そのせいで上司との人間関係が悪くなることで退職者が多くなってしまうのは企業にとって大きな損失です。
どんなツールを使っても、優秀な人材を加えても、根本的な体制を変えなければ何も変わりません。
今後は時代や環境に適応できる企業が生き残り、そうでない企業は逆に衰退していくでしょう。
上司は「退職したい」と相談する人を引き留めるべきか?
ここまで退職したい人の理由と解決策を解説しましたが、ここからは「退職したい人を本当に引き留めるべきなのか?」を解説します。
退職を引き留めた方がいい人
退職の相談をされて、それでも引き留めた方が良い人は「会社に必要な人」ではなく、「今後必要になってくる人」です。
退職者が出てくるということは、良くも悪くも会社の転換期であり、会社が変わっている証拠です。その変化に伴って社員も入れ替わるのです。
会社の変化によって内部の人間も変わるということは、その変化に適応できる人間か、変化後の会社に有益な人間が今後も必要になってきます。
つまり現在ではなく、将来のことを考えて引き留めるかどうかの判断をしましょう。
退職を引き留めなくていい人
逆に引き留めなくて良い人とは、今後変化も成長もしないであろう人です。
今の現状に文句を言うだけで自分は変わろうとしない人は、今後会社の負債になります。そういった人を引き留めても新しく入った人の成長を邪魔し、悪影響を与えるだけです。
もし今辞められると業務的に困る人でも、会社の成長のために引き留めることはやめましょう。
部下が退職の相談相手にあなたを選んだ理由
最後に、部下はそもそもなぜ、あなたに相談してきたのでしょうか?ここでは、考えられる理由を3つご紹介します。
- 仕事の不満をただ聞いてほしい
- 自分の決断に対して意見が欲しい
- 自分の決断を応援して欲しい
仕事の不満をただ聞いてほしい
仕事を辞めたいという人は、会社や業務に対して何らかの不満を抱えています。そのため、自分のつらさを他人に理解してほしく、話を聞いてくれそうな人を選んで相談している可能性があります。
ただ、人によっては「辞めたい」が口癖になっていて、真剣にアドバイスしたところで行動に起こさない人もいます。話を聞いてもらえば案外すっきりしたりもするので、具体的な解決策を求められているようでなければ、ただ話を聞いてみるだけでも十分でしょう。
自分の決断に対して意見が欲しい
前述のケースとは別に、退職したいと思っているのの、他に何か解決の糸口があるのかどうか。先輩社員のあなたからアドバイスが欲しいというケースもあります。
もしもあなたが同様のケースで悩んだ経験があれば、当時自分が対処した方法を伝えてみるのも良いでしょう。
ただ、人間関係・仕事内容・会社そのものなど、人が抱える悩みの種類はさまざまです。価値観を押しつけて話すのではなく、あくまであなたの意見として伝えましょう。
自分の決断を応援して欲しい
このケースは辞めることはほぼ決めているものの、最後の一押しが欲しいというものです。どちらかというと、ポジティブに背中をおして欲しいニュアンスが含まれています。
そのため、ただ単純に「辞めない方がいいよ」と無理に引き留めてしまうと、話を分かってくれない人だと認識されてしまうかもしれません。
相談されたら、あくまであなたが思う率直な意見を述べればいいですが、もし本人が将来のキャリアに対して新たな兆しを見出しているのであれば、それを応援してあげましょう。