近年は転職が当たり前になり、それが企業の大きな課題にもなっています。
その対応策として企業の多くが、社員同士のコミュニケーションを活性化して離職率を下げるといった施策を講じています。
しかし、これは大きな間違いです。社員同士のコミュニケーションを活性化したところで離職率を下げることはできませんし、ましてや売り上げを伸ばすことは当然できません。
なぜなら、社員の退職理由が人間関係で、そのコミュニケーションが原因になっているからです。
ここからは社員同士のコミュニケーションを活性化することでのメリット・デメリットを紹介した上で、実例を踏まえて本当にコミュニケーションは必要なのかを解説していきます。
中小企業がコミュニケーションを活性化することのメリット・デメリット
まずは社内のコミュニケーションを活性化することで発生するメリット・デメリットを紹介していきます。
- 離職率が下がる
- 業務が効率化される
- 社内行事やレクリエーションなどでコストがかかる
- 社内の雰囲気に合わない人が明確になる
中小企業がコミュニケーションを活性化することのメリット
離職率が下がる
社内のコミュニケーションを活性化することによって仕事の相談や、手伝ってほしい時にも声を掛けやすくなります。仕事で困っていそうな同僚や後輩の様子にいち早く気付き、手助けできる人が増えます。
つまり社員同士が助け合い、安心して働く事のできる環境をつくることは離職率の低下に繋がります。
業務が効率化される
社内コミュニケーションが活性化する事で、意思疎通の不足によって起こるケアレスミスを未然に防ぐことができ、効率的に業務を進める事が可能になります。
またトラブルが発生した際も、普段からコミュニケーションをとっていれば、すぐに情報共有して問題をすぐに解決することができます。
中小企業がコミュニケーションを活性化することのデメリット
社内行事やレクリエーションなどでコストがかかる
社内のコミュニケーションを活性化するためには、社内行事やレクリエーションなどのイベントの時間を設けなければいけません。
普段あまり付き合いがない他部署の人や、新入社員などはそういった機会を与えないとなかなかコミュニケーションをとるきっかけがありません。
同じ部署同士だとしても、業務中に積極的にコミュニケーションをとることにも限界があります。
このイベントなどを開催する際のコストがデメリットと言えるでしょう。
社内の雰囲気に合わない人が明確になる
2つ目のデメリットとしては、社内で浮いている人が明確になってしまうということです。
社内には色んな考え方の人がいるので、全員が仲良くコミュニケーションを取れるとは限りません。
コミュニケーションを活性化したことによって、会社の雰囲気に合う人と合わない人が出てきてしまい、それが明確化してより強く「この会社は自分には合わない」と感じてしまう人が多くなるというデメリットが考えられます。
社内のコミュニケーションを活性化しようとした中小企業の失敗例
ではここからはコミュニケーションを活性化しようとして失敗した、実際の例を紹介していきます。
※会社名は仮名です。
社内行事を増やした結果…
株式会社Aは今期で10期目の人材派遣会社です。
離職率が高い株式会社Aは、社内行事を年2回から、6回に増やすことで離職率を低下させ、採用にかかるコストを下げようとしました。
ですが、この施策で離職率が下がることはありませんでした。
施策前とほぼ変わらず、社内行事にかかるコストが多くなっただけでした。
コミュニケーションを意識したら社員が…
株式会社Cは地方の老舗の自動車整備会社です。従業員は30名程度で、今年の春に事業拡大のために新たに採用しました。
業務を円滑に進める狙いで、既存社員・新入社員共にコミュニケーションを頻繁に取るように指示しました。
ですが、社員は積極的にコミュニケーションを取ることはありませんでした。
中小企業の社内のコミュニケーションは必要?
では、上記の例も踏まえて「社内のコミュニケーションは本当に必要なのか?」を深堀ながら解説していきます。
コミュニケーションをとるだけでは社内は活性化しない
この問題を解説する上で一番勘違いしやすいのが「コミュニケーションを活性化すると社内の雰囲気は良くなって会社が活性化する」と思い込んでいる人が多いということです。
コミュニケーションというのは、あくまで業務を円滑に回すことができるようになるためのツールであり、それ以上でも以下でもありません。
さらに、「仲が良いということ」と「コミュニケーション」を同じ認識で捉えている人も多いですが、これも大きな間違いです。
社内のコミュニケーションの理想形は、常に情報の共有ができる状態であることです。仲が良いから言えないことができるというのは、本末転倒ではないでしょうか?
満足度と売上は比例しない
社内のコミュニケーションが活性化すると、従業員の満足度は上がります。
しかし、従業員の満足度と会社の売上は比例しません。
経営者が考えることは「どうやって利益を上げるか」であって、従業員の満足度を上げることではありません。利益を上げるためにコミュニケーションを取らせるだけなので、その手段が目的にならないように気を付けましょう。
研修を通してコミュニケーションをとる
そうはいってもコミュニケーションを積極的に取ることはもちろん重要です。
そのため、レクリエーションや社内行事ではなく、研修という形で取らせるようにしましょう。
研修であれば、常に業務を意識しながら取り組むので、業務内で活きるコミュニケーションをつくることができます。
- 中小企業にとって有効な、コミュニケーション活性化の方法は?
-
レクリエーションや社内行事ももちろん大切ですが、業務に直結する研修などを通じてコミュニケーションをとってもらう方法が考えられます。
社内コミュニケーションに活用できる方法
ここまで社内に過度なコミュニケーションは必要ないと解説しましたが、簡単に導入でき、効果の高いツールは導入しても問題はないでしょう。
下記では社内でカンタンにコミュニケーションを取る方法を3点紹介します。
- 面談
- Web社内報サービス
- サンクスカード
面談
1つ目は面談です。
評価や査定などで行うことが多い面談ですが、コミュニケーションをとるツールとしても活用できます。
面談は従業員と1対1で会話ができる貴重な機会でもあるので、そこで最低限のコミュニケーションを図り、良好な関係を築くことは重要です。
Web社内報
2つ目はWebの社内報です。
本来は紙で行っている企業が多いですが、これをWeb上で行うことで簡単かつスピード感をもってコミュニケーションをとるいことができます。さらに情報の共有にも活用できるのでおすすめです。
ですが、情報の発信が一歩的になってしまう点が懸念点になりますので、発信の際は細心の注意を払いましょう。
サンクスカード
3つはサンクスカードです。
サンクスカードとは、人に何かしてもらったときに感謝の言葉を記載して渡すことです。
普段、あまりいうことがない感謝の言葉を相手に伝える機会を与えることで、より良い関係を築くことができます。
コミュニケーション活性化にみちびく運用方法
前述では、社内で簡単にコミュニケーションが取れる方法をご紹介しました。
ただ、実際に計画した施策を試してみたい人も多いはずです。最後に、コミュニケーション活性化の施策を成功に導く運用ポイントをご紹介します。
- 社員同士が知り合うきっかけづくりの提供
- 部署の垣根を超えて、会社全体で取り組む
- 長期・短期施策を組み合わせる
- PDCAを回して取り組みを活性化させる
社員同士が知り合うきっかけづくりの提供
まずはじめに、従業員同士が知り合うきっかけを作る必要があるでしょう。
もしも社員同士の接点がなく交流が生まれにくい職場であれば、まずは社内報やSNS、1on1ミーティング、シャッフルランチをしてみても良いかもしれません。
部署の垣根を超えて、会社全体で取り組む
社内のコミュニケーション活性化は、人事部だけでなく会社全体で取り組むべき課題です。そのため、部署の壁は取り払い。みんなで一丸となって取り組む姿勢を持ちましょう。
施策の目的をきちんと共有し、全員が納得感を持ち進めることが重要です。
長期・短期施策を組み合わせる
施策には、短期的に結果が出せるものと、長期的に取り組まないと結果が出ないものに分けられます。どちらか一方に施策が偏ってしまうと、継続的な成果が生まれません。
成果が出ないと、担当する社員のモチベーションにも関与するため、きちんとバランスよく計画しましょう。
PDCAを回して取り組みを活性化させる
継続的な成果を生み出すためのもう一つ重要なことに、きちんとPDCAを回していくことが考えられます。施策の実行後は、社員にアンケートを行うなどして反応を見てみても良いでしょう。更なるコミュニケーション活性化につながるよう、常に施策を刷新していくことが大切です。
まとめ:中小企業の課題はコミュニケーションでは解決できない
ここまでコミュニケーションで社内の活性化はできないという紹介しました。
コミュニケーションの活性化は確かに魅力的な施策ですが、これは大変コスパが悪いです。
なぜなら、入社してくる人によって環境や人間関係は常に変化しているからです。
そこに適応しながら良いコミュニケーションを図ることは正直難しいですし、再現性もありません。
つまり、離職率のコントロールもできないと言ってもいいでしょう。
既存の従業員をコミュニケーションを使って活性化するよりも、採用に力を入れて社内の新陳代謝を良くする方が即効性があります。