結論からいうと、離職率を下げることはできません!
その理由は、
・慢性的な人材不足により、人材の需要過多が起きている。
・個人が企業に求める事が大きくなっている
・転職が当たり前の雰囲気の時代になっている
この3つの要因が考えられます。
離職率の状況と原因
厚生労働省から、「令和2年 雇用動向調査結果の概要」が公表されました(令和3年8月31日公表)
令和2年1年間の入職者率は 14.2%(入職者数7,103.4千人)、離職者率は13.9% (離職者数7,272.1千人)となっており、非常に人材の入れ替わりが激しいことが読み取れます。
そこであらゆる企業が求人・採用、人材確保に力を入れ始めました。
しかし、応募者に業界や会社に興味を持ってもらえたとしても、自社の状態が悪すぎる状態が続けば、入社を辞退されかねません。
その改善策として、社風、職場環境、福利厚生などの改善にコストや工数がかかることや、人間関係やモチベーションなどの変数が多い箇所に注力するのは最善策とは言えません。
実際にリクナビNEXTの「退職理由の本音ランキング」では、1位〜5位までの全ての理由が企業側での解決が難しいです。
1位:上司・経営者の仕事の仕方が気に入らなかった→従業員を気にして経営の方針を変えること変える事は難しい
2位:労働時間・環境が不満だった→労務環境の改善はコストが大幅にかかる
3位:同僚・先輩・後輩とうまくいかなかった→個人間の問題なので解決不可
4位:給与が低かった→給与を上げるとコストが大幅にかかる
5位:仕事内容が面白くなかった→基本的に解決不可
(引用:リクナビNEXT)
今回は経営者・人事が誤って手をつけてしまう5つの施策を紹介していきます。
最後には人手不足を解消するアクションプランも明示しますので、ぜひ参考にしてみて下さい。
休日を増やすのは絶対NG
休日を増やすことで離職率が低下することは基本的にありません。
また、休日を増やすことで逆に不満を抱くことも考えられます。主に下記の2点が不満内容として予想されます。
- 労働時間が増える
- 給与が減る
1.労働時間が増える
まず最初にやってしまいがちなのが「休日を増やして満足度を上げる」ということです。
しかし、休日が増えることで、1日あたりの業務量が増える可能性があります。1日あたりの規定労働時間が8時間から10時間に増えることを負担に感じる人もいます。
つまり、個人で考え方や価値観が違うので、1人1人に合わせることは良い判断とは言えません。
2.給与が減る
また、週休3日や週休4日を選ぶことで給与が減ることも、デメリットと感じる方もいるでしょう。
このことから、容易に休日を増やすことは会社の首を自ら絞める結果になってしまいます。
労働時間を短くしても離職率は改善しない
1.未完の業務が発生する恐れが生まれる
離職率を下げるために労働時間を短くする事は、基本的にしてはいけません。
従業員の生産性を上げるという目的であれば別ですが、何の策もなく労働時間を削ることは、未完の業務が発生する可能性を上げる結果になります。
2.業務効率化ツールの導入が必要
そのほか短時間でより生産性を高めるためには、RPAなど事務作業を効率化させるためのツールの導入も必要になります。
そうなればツールの導入費や、仕様を覚えてもらうための勉強会などの相応のコストが発生してしまいます。
業務の効率化のメリットは大きいですが、無理にツールを導入することでの人的コストははかり知れず、リスクも大きいです。
社員の教育に力を入れるのは無駄な改善
1.時間的・金銭的なコストが大きい
全ての社員に必要以上の教育を受けさせるのは無駄以外の何ものでもありません。
なぜなら教育した社員は2〜3年で転職してしまいますし、そもそも優秀な社員は何も言わなくても自ら成長します。
2.人事部や講師担当者の負担が大きい
さらに、社員教育のためにかかるコストもはかり知れません。
人事や講師が、研修内容の立案、メソッドの確立、ナレッジの共有、現場との連携などの手間も見えないコストとして重くのしかかってきます。
これを外部に委託するとさらに負担は大きいでしょう。
表面的にでもしたい人は、ある程度の資格手当などで事足りるでしょう。
福利厚生は会社のエゴ
1.費用負担が大きい
福利厚生の充実には、当然ながら費用がかかります。
どのような法定外福利厚生を導入するかにもよりますが、新しく導入するごとに、費用は大きくなっていきます。
日本経済団体連合会の調査によると、従業員1人1ヶ月あたりの法定福利厚生費は増加し続けており、2018年で88,188円となっています。
2.全ての従業員ニーズに応えることが不可能
福利厚生は、充実はできても決して万能ではありません。
従業員の性別、年齢、ライフスタイル、趣味嗜好は多様です。全ての従業員のニーズを満たす福利厚生の提供は、ほぼ不可能です。
さらに従業員数が多くなるほど、利用する人と、利用しない(できない)人の偏りが出ます。
社員に媚びるのは会社崩壊の原因
1.適切な距離感
離職率を下げるために必要に社員に媚びるような制度を作ることは最も危険です。
その理由は先ほどの福利厚生と同じで、全ての社員の要望を満たすことができないのであれば、社員の声を聞く必要はありません。
基本的に会社の利益に注力しましょう。
2.コミュニケーションは最低限でOK
役員などの幹部を除き、一般社員と過度なコミュニケーションは必要ありません。
なぜなら、従業員は経営者・幹部・人事など経営陣の考え方を理解することはありませんし、理解する必要もないからです。
それは従業員と経営陣との目的が明確に違うからです。
従業員は業務を行い決められた賃金を得るために働き、経営陣は自身の目的や理想のために働くからです。
2022年の離職率改善の決め手は成長欲と所属欲!
では、上記で紹介した間違った離職率の改善策を説明します。
結論から言うと、従業員が組織(会社に)に属する理由は、「成長」と「所属」なので、それ以外は無視してください。
会社に属することでの「成長」とは
従業員をマネジメントする時に「成果」ではなく「成長」をキーワードにマネジメントするようにしましょう。
なぜなら、人は誰でも程度に差はあれ「成長したい」という欲を持っているからです。
その「成長したい」という欲を響かせて「そのために何をすればいいのか?」ということと、目の前の役割・課題・業務との繋がりを設定してやれば、人は自律的に目標に向かって進んでいきます。
逆に、成果主義にして「やればやるだけ処遇が上がるからがんばろう」という声だけでは、人が動いていかないのは、あらゆる組織を見れば分かることでしょう。
「所属」という欲を利用する
人は家族、学校、会社といった「コミュニティ」に必ず属し、所属するコミュニティと個人の評価は連動します。
例えば、ブランド物を見れば「高いだろうな」と勝手に考えますよね。
つまり、周囲から見た個人とその個人が所属するコミュニティの評価は連動するので、会社における自らの評価を上げたい場合は、所属している会社の評価を上げる、つまり会社の看板を磨かなければ成立しません。
2022年で離職率が上がるのは当たり前
今の時代、転職は当然の選択です。
実際に「初めての退職は入社何年目の時?」というマイナビの調査では、1年目は17.7%、2年目は23.0%、3年目は25.7%という結果で、3年目が最も多く、3年以内に辞めた人の合計は、全体の66.4%にも上ることが分かりました。
(引用元:転職は「とりあえず3年」働いてから? 入社3年以内の転職は不利? アンケートで分かった意外な事実とは)
さらに厚生労働省の調査によると「新卒社員の約30%が3年以内に会社を辞めている」と言われています。
つまり、従業員は辞めるのを前提で経営しなければいけません。
その上で利益を出していくことが現代での常識になりつつあります。
会社の新陳代謝を上げて離職率ではなく利益を改善
経営における「新陳代謝」とは、「事業・業務・組織・人」の4つを「捨てる」「やめる」「入れ替える」ことです。
「赤字・低収益事業」から即時撤退し、「ムダな業務」をやめて、未来に向けて挑戦し続ける事が会社が生き残っていく唯一の道でしょう。
当然、何かを代謝しなければ、何かを創造することはできません。
しかし、「新陳代謝」が滞っている会社はあまりにも多いのが現状です。
「新陳代謝」こそが「会社の老化」を防ぎ、「会社のぜい肉」をそぎ落とし、「生きている会社」であり続けるための要因です。
まとめ:2022年版の経営は離職率の改善ではなく、採用力をUPさせる
離職率の解説してきましたが、ここ最近で転職での考え方は大きく変化しつつあります。そんな中で、そもそも人材採用活動でミスマッチが発生していては元も子もありません。